―――宮崎さんから見た、寿太郎さんの経営者としての印象はいかがですか?

 

(宮崎)

ミッションが明確な経営者だと思います。経営的にミッションが見定められている事業が羨ましいとも思います。私の会社は、フィロソフィー(哲学)はしっかり持っているのですが、それが社会課題に対してぼやっとしていると思うこともあります。

ミッションに取り組んでいる会社は、その存在目的がはっきりしています。僕らは活動が既にある中で、方向性をその都度見出していくスタイルです。たぶん、創造系不動産、寿太郎さんがやっている「建築と不動産のあいだ」は、方向性というより「フィールド(場)」を見出しているので、やることがはっきりしている。その場を発見したのは凄いと思います。

 

―――やはり、宮崎さんの切り口があって面白いですね。寿太郎さんから見た宮崎さんの経営者としての印象はどうですか?

 

(高橋)

宮崎さんは、誰よりも多面的な経営者です。東京藝大出身、そして磯崎アトリエ出身の建築家です。そして活動家というか、みずから町に飛び出して建築の枠を超えて活動する先駆者でもあります。一方で、自らいろんな事業を企画、実行して、たくさんの人を雇う経営者です。思想家というと言い過ぎかもしれないけど、一連の活動が多くの人に影響を与えています。枠におさまらない幅広いスタンスと、そしてそのバランスがとても個性的です。

ここまで多面的な顔をもつ建築家、または経営者は、なかなかいません。宮崎さん、それは意識的なんでしょうか?

 

(宮崎)

新しい事業に取り組むとき、「建築家としての職能」を拡大していくべき、いやそうではない、といった「べき論」になりがちだが、基本的にわりとどうでもいいと思っています。結局、建築家としてというより、ひとりの人間としてどうか、という問題に尽きると思っていて。

そこまで建築家という冠を背負わなくてもいいのではないかな、と。生きてきている時間の中で、「建築」はとても重要な出会いだったけど、でも半分くらいじゃないですかね。ひとりの人間として、実現したいビジョンがあったとき、持っているスキルや手段を何でも使って、そしてひとりでは何もできないので、仲間をまきこんでいくでしょう。そうして「何をするか」が重要で、立場にはこだわりません。

 

―――建築と経営のあいだ研究所(あいだけん)の活動について、感想や意見、質問はありますか?

 

私は寿太郎さんに、ちょいちょい聞いちゃうんですけど。意見としては、寿太郎さんがこういう活動(建築と経営を融合させるコミュニティ)をやってもらうことで、ぼくらも勇気づけられるところがあります。

僕たちも確信をもって実行している訳ではなく、常に事業はさぐりさぐりです。確信がないことは悪いことではないですよね?経営に正解はないですから、一緒にさぐるプロセスが面白いと思っています。ひきつづき一緒にさぐれたらと、あいだけんの会員にも入りました。

 

―――それは本当に嬉しいですね。

 

※2021年4月「建築と経営のあいだ研究所」のインタビューより一部抜粋と加筆修正。聞き手/プログラムファシリテーター・シブヤタカアキ氏

※宮崎晃吉氏経歴 https://www.aidaken.com/author/mitsuyoshimiyazaki/ 「建築と経営のあいだ研究所」サイトより

※宮崎晃吉氏が主宰する「HAGISO」 のWebサイト https://hagiso.com/hagiso/