東京都国分寺市の戸建住宅の新築プロジェクトです。

建築は都市計画法の制限によって、建物規模や使用用途等の制限を受けます。
本件で購入した土地は契約時点で、いくつかの都市計画の変更が決まっていました。
容積率:80%→100%
敷地の最低限度:なし→100㎡
防火区域:指定なし→準防火地域

最低敷地面積の制限は、一定面積以下の新規の分割を規制する法律です。本物件は大きな敷地を2分割した物件であったので、注意が必要でした。測量が古い場合や、何らかの錯誤があった場合、公簿と敷地面積が異なることもしばしばです。もし分割された土地が100㎡以下だった場合建築することもできない土地の可能性もありました。
また、容積率が100%になることが建築家に情報共有できていなければ、建物のボリュームも変わってしまいます。すると資金計画やプランも大きく異なるかもしれません。
この取引では、確定測量の成果簿をきちんと確認し、設計のスケジュールと照らして、新しい都市計画制限の中でも、目的とする建物を建てられることを確認して、不動産売買契約を結びました。

建築家住宅の場合、一般的に土地の引き渡しから、着工までに約半年から1年の時間を要することもしばしばです。購入する土地の法令を、建築家が確認申請を受ける時期にどうなっているかを見越し、公示されている都市計画や条例の変更予定を十分に調べておくことが重要です。

 

 

―――――以下建築家のテキストです―――――

計画地は世代交代などにより庭付きの宅地の細分化が進む住宅地にある。建主は料理に集中出来る台所と、落ち着きが感じられる住宅を望んでいた。

近隣の間口が狭く奥行きが長い区画には北側から等しく斜線制限がかかり、通りには定められた様に片流れ屋根の家々が並ぶ。この敷地も例外ではなく、密集化が進む住宅地で街と住宅の距離感や関係性をどのように結ぶかが課題であった。

そこで道路側に前庭を設ける建物配置とし、アプローチ空間として街と住宅の距離を保ち、この街で失われつつある庭木が作る街並みを引き継ぐ役割を託した。

 

街と繋がる、街から遠く離れた静かな場所

1階に個室と水回りを、2階に居間・食堂・台所を配置し、階段は道路から最も遠い位置に計画した。街から長い距離を歩き抑揚のある空間体験を経て辿り着くそれぞれの居場所は、窓を通して再度街に繋がる。これは密集地において街と適切な関係を結ぶためには、一度街から遠く離れた静かな場所を作る必要があると考えた結果である。街から離れた居場所を再び街に繋ぐことにより、街と住宅はより奥行きと拡がりを持った関係を結ぶことが出来る。

 

片流れ屋根がつくる気積と居場所

敷地形状と斜線制限が導く片流れ屋根を所与のものとして受け止め手掛かりとしつつ、同時に周辺の住宅とは全く異なる空間体験の実現を試みた。

片流れ屋根が作る最大の気積を感じられる断面構成とし、2階においては1.8m~3.6mという2倍もの天井高さの変化と、異なるスケールの居場所を作り出した。

 

建築と家具を繋ぎ、空気感を作るディテール

この住宅の様々なディテールは、建主が所有する日欧のモダンヴィンテージ家具の特徴や存在感に呼応する形で生まれた。アールを描く平面や断面は、視線や動線を導き、空間の繋がり/隔たりを強調し、光の存在を顕在化する多義的な役割を持つ。また建築と家具という異なるスケールのものを繋ぐと共に、共通する形態や素材を用いたディテールは、どこに居ても同じ一つの建築の中にいるのだという実感を確かなものにする。

 

「静けさ」がもたらすもの

建築がもたらす「静けさ」とは、単に音響的な概念ではなく、時間や空間に関わる概念である様に思う。

「静けさ」を感じさせる建築は、過去や未来といった時間の概念を超えて「今」という瞬間と、他ではない「ここ」に意識を向かわせる力を持ち、人が独りであることを肯定し包み込む。

どうすれば、その様な質が伴う建築を実現することができるのか常に模索しているが、特にその重要性を再認識した仕事となった。

 

 

  • 住所:東京都国分寺市
  • 構造規模:木造軸組工法 地上2階建て
  • 敷地面積:100.42㎡
  • 建築面積:42.42㎡
  • 延べ床面積:79.97㎡
  • 設計・監理:森田悠紀建築設計事務所
  • 写真:西川公朗
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史