花岡徳秋建築設計事務所による千葉県の新築住宅です。
クライアントは、明るく開放的な平屋、トレーニングができる広間、コンクリート造で眺めの良い家で暮らしたいという希望がありました。

クライアントと建築家が見つけた土地は、海が一望できる土地でした。
高台に位置し、南北で10mほど高低差のある傾斜地です

傾斜地で住宅を新築しようとすると、扱える銀行は限られます。
コストや法令などの面から、建築に制限がかかり、平坦な土地より「担保評価」が下がるためです。
そのため、土地を購入する前の段階で、対応できる銀行探しが必要でした。
候補となる銀行へ、クライアントの情報や土地の状況、資金計画などを丁寧に説明し、絞っていきます。

住宅の中央には空中庭と名付けられた中庭が設けられました。空中庭から風が抜け、居室からは絶景を望めます。

クライアントが土地から感じた価値は、銀行や市場の評価とは異なりました。
その場所を見たときから、建築家とクライアントは豊かな自然を感じられる暮らしを想像していました。

動画:YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=WhHZjxZ-3oo

以下、建築家のテキストです。
建主からの要望は、明るく開放的な平屋、トレーニングができる広間、コンクリート造、そして眺めのよい土地を一緒に探してほしいなどであった。敷地は海を望むことができる高台の頂上付近に位置する。
海へ続く北斜面に沿うように立派な枝ぶりの樹木が生息しており、その木々の間にぽかりと開いた空地の一角にある。平坦な部分を一切もたないこの敷地は、南北で10mほどの高低差があった。ここで建築をつくることができれば、建主にとってかけがいのない場所性を有していると感じた。
住宅を斜面から切り離し浮遊させることで、海から斜めに伸びてくる地面がそのまま通り抜ける場所が生まれるのではないか。遠くの景色だけでなく、目の前の樹木と共に生きていることが実感できる住環境を築けるのではないかと考えた。柱とブレースによって宙に掲げられた11m角の高床住宅を提案した。
全体構成は上階に居住領域を、下階に中間領域を配し、2層の中心を3m角の孔が貫いている。下階は、ひと回り大きく跳ね出した上部を4本の柱とブレースが支えている。中心の孔から光が射し、雨が落ち、風が通り抜ける軒下空間とした。上階は見通せない一室空間とし、生活の変化に応じ、居場所が伸縮できるよう引戸を設けた。中心の孔は建具の開閉で屋外まで生活が広がるよう有孔鋼板を敷き、空中庭として内外の連続感をつくった。
無限に広がる自然の中を漂う一室空間を柱とブレースが突き抜けることで居場所となり、中心を余白が抜けることでこの環境と共に呼吸していく。建て主との緊張感ある協働により実現した住宅である。

  • 所在地:千葉県
  • 構造規模: RC造1階建て
  • 設計監理:花岡徳秋建築設計事務所
  • 構造:川田知典構造設計
  • 施工:沢工務店 担当:牧野利之
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 須永則明 村岡知美 野々垣賢人
  • 写真:Tsuyoshi Fujino
  • 掲載:新建築住宅特集2022年5月号