建築家・ikmoの比護結子さんが設計した、東京都町田市の戸建住宅の新築プロジェクトです。

広さや駅距離などが重視されて表現されるポータルサイトや販売図面などの不動産広告と、建築計画の際に重要になる空間の広がりや実際の周辺環境には、しばしば大きな違いがあります。

販売図面を見ると、二面道路に接する角地で長方形の土地、そういう印象です。間違いではないのですが、実際に現地を見ると、敷地南側の私道の向かい側には緑豊かな緑地が広がっていました。

魅力的な周辺環境が建築のポテンシャルを高めてくれる敷地です。

不動産広告が表現しきれない敷地状況を、実際に現地に赴いて、建築家・クライアントと共に読み解く事で、隣接した公園からの眺望を享受し、暖かい光が家全体に感じられるスキップフロアの住宅が完成しました。

以下、建築家のテキストです。――――――――――――――――――――――――――

敷地は1960~70年代に多摩丘陵を造成してつくられた住宅地の端に位置し、開発されずに残った緑地に面しています。地域住民が管理に関わっている緑地は日常的な憩いの場となっており、丘陵の谷に沿って蛇行する道は緑地に向かう人々の散歩道になっています。

ローカルパブリックな緑地と住宅地の双方の環境に添わせるため、緑地に向かって角度を振った3層の「櫓」と丘陵の段状に道に沿って建つヴォリュームの2つに分割し、内部階段で連結しました。

櫓は洞窟・サンルーム・物見台のような性質の異なる3つの小さな空間を重ね、環境をダイレクトに取り込みます。夜に明りが灯ると緑地や散歩道を照らす行燈のようになります。もう一つのヴォリュームは暮らしの中心となる空間とし、蛇行する道や周辺住宅地の庭に向かって開いています。2つのヴォリュームでレベルや開口をずらすことで、「の」の字を描くように5つのフロアが連なり、住宅内部に新しい風景が展開します。

  • 住所:東京都町田市
  • 構造規模:RC造地下1階+木造軸組工法 地上2階建て
  • 設計・監理:ikmo
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史