分譲マンションの場合、給排水の主管や躯体、窓サッシは共用部分にあたるため、リノベーションで自由に変更することはできません。水回りを大きく移動することは難しく、窓や玄関扉といった外部と接続する開口部の位置や仕様も原則として既存のまま活かすことになります。だからこそ、完成後の間取りを具体的に思い描きながら物件を選ぶことが重要です。光をどのように取り込み、どのような動線を描くのか。その構想は、物件の骨格に強く依存します。

依頼主と松岡さん、そして私たちで物件を探し続ける中でたどり着いたのが、小竹向原にある築約25年の分譲マンションでした。住戸の間取りは珍しく「正方形」に近い整った形状で、南北の両面に開口を備えています。そこに松岡さんは可能性を感じました。さらに、給排水の主管は住戸の隅と中心にそれぞれ1か所ずつ配置されており、プランニングの自由度を一定程度確保できる構成でした。

既存の間取りは、各居室が独立し、それぞれに窓を持つオーソドックスな構成でした。しかし北側の2室は共用廊下に面しており、窓を開けにくく、光や風を十分に取り込みにくい環境でした。そのため、実際の面積以上に閉塞感を感じやすい点が課題となっていました。

松岡さんは、既存の配管位置と開口条件を前提に、間取りを根本から再整理しました。中心と隅にある給排水管の位置を手がかりに水回りを合理的に配置し、その周囲を回遊できる平面構成へと再編しています。行き止まりの少ない動線とすることで、日常の使い勝手を高めると同時に、住戸全体に視線と光が巡る計画としました。

特に北側の居室については、完全な独立空間とするのではなく、LDKと連続したスペースとして再定義しました。大きな引き戸で仕切ることで、必要に応じて個室としても機能しつつ、普段は一体的な広がりを感じられる構成としています。これにより、住戸の奥に位置する空間であっても孤立することなく、南側の光や家族の気配を穏やかに共有できるようになりました。

マンションリノベーションでは、「変えられないもの」を正確に把握することが設計の出発点になります。躯体や配管、開口といった固定条件を制約として捉えるのではなく、空間構成を導くための前提として読み解くこと。設計者も一緒に物件選びを行うことで、その視点を物件選びの段階から共有でき、よりよい家づくりが実現できます。

不動産選びは単なる取得行為ではなく、設計と連続したプロセスです。住戸の形状、開口の向き、配管の位置といった骨格を丁寧に読み取り、その可能性を引き出していくことが、建築家とのリノベーションにつながる大きな価値だといえるでしょう。
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以下建築家によるテキストです
都内のマンション一室のリノベーション計画である。個室を最小限とし家族が過ごせる共有スペースをできる限り確保したいという施主の要望からゾーニングを検討した。比較的間口の広い室形状であったため、個室や水廻りで共有スペース囲むように配置し、キッチンを中心とした大きなワンルームとなるように計画した。共有スペースはリビングダイニングを大きな空間とし、キッチン廻りにスタディスペースやギャラリースペース、窓際に収納を兼ねたベンチなどの小さな空間を散りばめることで様々な居場所をつくり出した。そのときの気分で過ごす場所を変えながら生活ができるようにすることで家族が同じ空間に居ながらも距離感が保てることを意識して配置を計画をした。

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  • 住所:東京都板橋区
  • 構造規模:鉄筋コンクリート造10階建ての2階部分
  • 専有面積:84.75㎡
  • 設計・監理:松岡佑樹建築設計事務所
  • 撮影:大崎衛門/ナカサ&パートナーズ
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史