建築家・渡邉光紀さんと取り組んでいるマンションリノベーションプロジェクトです。

建築家が自ら住まいを探し、購入に至る。そのプロセスは、一般の方とは少し違った視点が加わります。たとえば物件の内見では単に間取りや内装を見るのではなく、光や風の通り方、天井の高さ、構造の成り立ちまで、より細やかな観察が行われます。「この壁は抜けそうか?」「配管スペースはあるか?」など、将来的なリノベーションの可能性を総合的にシュミレーションしました。

建築家の渡邉さんは既存のトップライトを活用しながらキッチンのレイアウトを見直すことで、限られた面積の中でもリビング・ダイニングをゆとりある空間へと再構築しました。

写真:中村晃

写真:高橋真美

写真:中村晃

 

リノベーション前は、個々の部屋が分断されていましたが、室内へと視線が抜ける建具デザインにより、空間全体に光と風を取り込み連続性と広がりを生み出しています。

写真:中村晃

写真:高橋真美

 

また玄関は縁側と捉えなおし、土間スペースを設け、外部からの自然光を取り込みアールを描くコーナー形状を採用することで、柔らかく明るいエントランス空間を実現しました。

写真:中村晃

写真:高橋真美

マンションリノベーションは専有部のみが改修の対象となるため、構造や設備などの制約があります。一方で、渡邉さんは空間のつながりや光の取り込み方を丁寧に計画することで、新たなのびやかさと開放感を生み出しました。

 

―――――以下建築家のテキストです―――――

手触りと洗練された贅沢。

初めて現地を訪れた時は、長い年月で、壁も床も古びており、どこから手をつけようかと考えていた。

その中で、出窓に残った障子と、キッチンの真上に開けたトップライト。

40年かけて飴色になった障子は、手のひらで触れたくなるような深みがあり、壁に閉ざされたキッチンには、

トップライトから柔らかな光が落ちていた。

 

変わりゆく素材をネガティブに捉えがちな、現代のマンションとは異なる手触りが残されていた。

この時間の質感を軸にしながら、現在の暮らしに調整することを、デザインの手掛かりとした。

 

まず、閉ざされていたキッチンをリビングと一体にし、トップライトの光が部屋全体に広がるようにした。

光の落ちる場所には、ひとつずつ表情の異なるクラフトタイルを敷き込んだ。手仕事でつくられたタイルの

ざらつきに光が落ちると、時間によって刻々と表情を変える。

 

玄関は、外と中のあいだを受けとめる「縁側」と捉え直した。

足もとには天然石の砂利を敷き、外部との緩やかなつながりを表現し、框には名栗加工を施し、

木の陰影が空間の境界をやわらかく示す。

 

古い素材が持つ時間の厚みと、現代の暮らしの軽やかさ。

リノベーションだからこそ、生まれる住まいを計画した。

 

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  • 住所:東京都目黒区
  • 構造規模:鉄筋コンクリート造3階建ての3階部分
  • 築年月:1984年5月
  • 専有面積:53.47㎡
  • 設計・監理:CHITOSE 渡邉光紀
  • 写真:中村晃・高橋真美
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 中村有希・川原聡史