Kai Design 建築設計事務所の設計による、神奈川県川崎市に立つSRC造9階建てマンションの1室のリノベーションです。

マンションリノベーションの場合、気に入った物件が見つかった際、スピーディーに意思決定できると施主にとって大きなメリットがあります。
建築家と不動産コンサルタントが初期から連携することで、それが可能となるのです。

建て主は当初、川崎市内の広いエリアを視野に入れて中古マンションを探していました。
1年弱ほど建築家とともに色々な物件を内見し、なかなか決まらずにいる中、9階建てマンションの販売情報が出ました。

マンションリノベーションの場合、物件購入希望の競合が多数いるため、内覧から1、2週間ほどで契約する必要があります。

その間に建物の管理状況や役所関係の調査など、調べるべきことがいくつかあります。
創造系不動産の場合は、これらにプラスして建築家と共に竣工図調査をこの期間に行います。

通常マンションの管理組合は建物がマンションが竣工した当時の図面を保管しています。
それらを確認し、寸法や設備、配管経路などを調査するのです。

竣工図調査をこの段階で行うことで、この空間で実現したいことをできる条件がそろっているのかを、建築的に判断することができます。

また、契約後には決済を待たずに設計を進められるので、決済から引っ越しまでの期間を短くすることができるのも、建て主への大きなメリットです。

これは、V(ビジョン)やF(ファイナンシャル)プランの段階から、建て主と建築家、不動産が共に考える座組があるからこそ可能なことです。

このプロジェクトの場合は、マンション販売情報が急遽出たのですが、すでに建主と建築家、不動産コンサルタントの間でこの空間で実現したいことを細かいところまで共有していたため、内覧後すぐに竣工図調査をしてスムーズに契約まで進むことができました。

建て主は、9階建てのマンションのうち8階の区画を購入し、リノベーションを行いました。

以下、建築家によるテキストです。

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今回のプロジェクトはご夫婦と子ども2人の4人家族のためのマンションリノベーションでした。
家族形態が変わっていき将来的な売却も想定し汎用性のあるプランにすることと、クライアントが集めている家具をどう見せるかを考えて検討しました。
予算を抑えるためにも既存の水回りの位置から大きな変更はせず、ベビーカーなども置ける広めの玄関土間や必要な個室を確保しつつ、できる限りリビングダイニングを広くとる事ができるようにしました。
リビングダイニングは生活感が出ないようにキッチンとも区画できるようにし、シンプルな構成でも壁の余白をバランスよく配置。造作家具も壁面の長さに合わせ一体感のあるデザインとしました。
そうすることで持ち込みの家具やアートを飾るのに適した、ニュートラルで居心地の良い空間にできたと思います。
クライアントの好きなものに囲まれて、楽しく住んでもらえたら嬉しいです。
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  • 住所:神奈川県川崎市
  • 主要用途:専用住宅(区分)
  • 専有面積:74.75㎡
  • 構造規模:SRC造 9階建て8階部分
  • 設計・監理:Kai Design 建築設計事務所 荒井海太郎
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史
  • 施工:みや玄
  • 竣工:2024年2月
  • 写真:Nacasa & Partners Inc. Osaki Emon
  • 記事編集協力:玉木裕希