— — — 野々垣さんの現在の活動は?

 

愛知県瀬戸市で、建築と不動産の両方の専門性を生かした、地域づくりを行う会社「株式会社きんつぎ」を2021年に創業し、経営しています。集合住宅の設計からシェアスペースの運営まで行っています。2022~2023年には、大規模なクラウドファンディングも実施し、きんつぎのまちづくり拠点「瀬戸暮らし研究所」の創設に着手しました。大きな話題になっていると思います。

 

— — — 創造系不動産にいた頃はどんな仕事をしていましたか?

 

主に「不動産コンサルティング業務」と、千葉県いすみ市で「いすみラーニングセンター」の運営に関わっていました。また現在、創造系不動産が入っている墨田区の「イマケンビル」(築55年の一棟リノベーション)の、企画からリーシングまで、不動産コンサルティングを担当しました。古いビルをどのように改修するのか、どのように資金調達するのか、家賃を幾らに設定して、何年でどのように回収できるのか、用途検討(店舗・賃貸住宅・駐車場など)から資金計画、リーシングまで一貫した不動産のコンサルティングを経験しました。

 

— — — 創造系不動産で得られたことは?

 

不動産コンサルタントという立場で実感したのは、オーナーが人生をかけてそれぞれの事業を行っているということです。前職では住宅設計をしていましたが、お金のことをそこまで詳しく聞けません。不動産の世界に入ってみると、まずオーナーの資産を把握して、今回の工事ではいくらかかけると何年後にどのように資産形成できるかを計算します。オーナーの今後の35年間にコミットするようなものなので、事業者としての立場を学べました。

また、泥臭い調査は勉強になりました。計画地周辺の賃貸住宅をたくさん見たり、不動産業者にヒアリングに回ったり、時にはタクシーの運転手にどのような街か聞き込みをしたり、不動産マーケティングの具体的な方法を学べたと思います。

 

— — — 建築と不動産のあいだの問題とは?

 

日本にはそれぞれをつなぐパイプがほとんどなく、情報が行き来していないことです。私はもともと設計をやっていたので、設計者の知り合いはたくさんいて、SNSで見ているのも建築家のコメントばかりです。創造系不動産に入社してからは、不動産業界の知人も増えましたが、もともとは不動産業界にはまったく知り合いがいませんでした。それくらい接点がありません。建築と不動産のそれぞれの専門家が、フランクに情報交換ができる世界ができると、もっとオーナーの事業はうまくいくのではないかと思います。

 

— — — 創造系不動産に入社するメリットは?

 

私が創造系不動産に入ったのは、設計事務所時代は不動産のことが全然わからなくて、いくつかの建築プロジェクトが止まったのがきっかけにありました。このままでは、先々まずい、と。もちろん創造系不動産に5年間いれたので、基礎から応用までしっかり学べました。それ以外に自分のチームを持たせてもらって、チームを経営したり、不動産以外の経営戦略やマーケティングなどを学びました。創造系不動産はリーダーになる前にビジネススクールに通わせてくれます。また、多数の地方プロジェクトでは、地方独特のコミュニケーションのとり方、プロジェクトを進める上で大切になる仲間のつくり方など多面的に学べました。結局、これから仕事で顧客の役に立って、稼いで生活していくために必要なことは、そうした能力だと思いますが、創造系不動産ではそれらをすべて学ぶことができると思います。