tombow architectsを主宰する建築家・小林佑輔さんの自邸、戸建住宅のリノベーションプロジェクトです。川崎市多摩区で住宅を探していた建築家は、中古戸建の購入を検討することになりました。
物件は斜面地に建っており、かつ地上1階部分が木造、地下1階部分が鉄筋コンクリート造と特殊な建物です。
戸建住宅をリノベーションするにあたっては既存建物の状態をよく精査する必要があるのですが、今回は既存建物の図面や資料はほとんどありませんでした。
このような場合、通常、物件購入前で取得できる情報は建築確認の資料ぐらいしかなく購入の判断が付きづらくなってしまいます。
ただ、資料を集める中で、既存建物の施工中の写真が見つかり、当時の配筋工事を行っている様子がわかりました。この写真の配筋状況と既存現地を確認したうえで、建築家は予算内でリノベーションを行うことが可能だと推定することができ、物件の購入に踏み切ることができました。
物件購入の前段階から、建築と不動産という専門的な知見を持つ2者がタッグを組むことによって、その物件をリノベーションするリスクの大きさを想定することができます。
――――――――以下建築家のテキストです―――――――
多摩丘陵地帯の傾斜地に建つ築45年の戸建て住宅の改修計画。既存建物が持っていた空間的魅力を最大化しながら、家族4人のための住空間と設計者自身のアトリエを併設するための整備を行った。室の配置と形状はそのままに、空間の境界に手を加えることで繋がり方を編集し、ひいては家全体を再定義することを試みた。
地上階ではアトリエの入口と中庭の出口を新設し、地下階ではアトリエへの動線を兼ねた吹抜けを追加することで、内部を経由して外から外へ貫通するような抜けを内外開口部の配置により整理した。また、水回り建具の反射により、視線、光、風が中庭を囲うかたちで回る。
ここでの空間境界面の編集は、壁と開口だけに焦点を当てるのではなく、建具、家具、階段、素材、構造部材など、境界面に被さるエレメントを新旧の境やサイズの大小関係なく全て等価に扱い再構築している。視点の抜けだけでなく、その場のモノが重なることで、周辺への広がりをより一層感じ、家全体が傾斜地に丸ごと飲み込まれたような空間へと変質させた。
今後住まい方やアトリエの使い方は子供たちの成長とともに変わっていく。それまで建物が歩んできた時間を止めることなく、骨格として外界に繋がりを持ったこの建築は、新しく獲得した境界面を手がかりに今後変化し続けていくことを期待している。
- 住所:神奈川県川崎市多摩区
- 構造規模:混構造(木+RC)地下1階地上1階建て
- 敷地面積:138.71㎡(41.95坪)
- 建築面積:66.6㎡(20.14坪)
- 延床面積:108.89㎡(32.93坪)
- 設計監理:tombow architects 小林佑輔
- 構造設計:oha 長谷川理男
- 写真:山内紀人
- 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史
- 記事編集:創造系不動産 片山優樹