古谷野工務店の古谷野裕一さんによる、埼玉県川口市の戸建住宅の新築プロジェクトです。

通常、不動産広告や販売図面の記載だけでは実際の周辺環境を読み取りづらいことがあります。このプロジェクトは不動産広告や販売図面では読み取れず不動産価格に反映されない周辺環境の情報を、建築家と一緒に現地に行くことによって、最大限活かすことができました。
不動産売買の広告ではしばしば「不動産販売図面」と呼ばれる物件資料が使われます。販売図面ではほとんどの場合周辺の環境に関する情報がなく、この売地の販売図面では、敷地と接道部分だけが表現されていました。

不動産広告の表現
この販売図面の表現の場合、周囲の状況と情報が記載されていないことが多く、どのような周辺環境かわかりません。
しかし実際に現地に行くと、敷地の北東側には川と公園が広がっており、それらを反映しつつ住空間をつくるように計画は進んでいきました。

実際の周辺環境
建築家とコミュニケーションを取りながら不動産探しを行うことによって、不動産的視点だけでなく建築的視点・空間的視点も入るので、その敷地のポテンシャルを最大限生かして住宅の設計にのぞむことができます。
以下、建築家のテキストです。
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袋小路の奥に位置する敷地は、東側に水路と広大な緑地、前面道路に面する西側に住宅地が広がるという、東西で異なるコンテクストを持つ環境です。

この対照的な環境を受け止める住まいの在り方を模索し、住まいの中心に柱を据え、南北方向に棟木を通し、東西に均等な切妻屋根を架けた、小屋のような素朴な空間の住まいを計画しました。

東側には、豊かな自然が背景となる位置に合わせて大きな開口部を設け、西側は開口を控えつつ、キッチンから通りの様子が見渡せる横長の窓を配置し、家族の行き来や来訪者を迎え入れる関係をつくりました。

建物を長手方向に貫く棟木、居間の中心にある化粧柱、階段や手すり、化粧梁と同素材で設えたカウンターなど、素朴な素材とディテールにより、窓の外に広がる自然豊かな風景と室内が調和する空間をイメージしています。

屋根面に約10kwの太陽光パネルを載せることでZEHを実現した住まいの計画です。
- 住所:埼玉県川口市
- 主要用途:住宅
- 構造規模:木造軸組工法地上2階建て
- 敷地面積:154.86m2(46.84坪)
- 建築面積:45.54m2(13.77坪)
- 延床面積:90.20m2(27.28坪)
- 設計・監理・施工:古谷野工務店
- 構造設計:KMC(蒲池健)
- 撮影:西川公朗
- 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史