建築家knof(ノフ)の菊嶋かおりと永澤一輝による新築店舗併用住宅のプロジェクトです。
江東区の運河に面した土地が、本プロジェクトの敷地です。
創造系不動産はローンマネジメントを担当していました。

住宅ローンは、基本的に自己居住用の住居を建てる方を対象とした金融商品です。
ですが、金融機関によっては賃貸部分を含んでいても融資してくれたり、店舗部分が含まれている建物の計画であっても相談に乗ってくれたりします。
そのため、金融機関との協議を行えば、店舗併用住宅の建設に当たって住宅ローンを借り入れることも可能になります。

ただし、事業用ローンと異なり、建築する建物の担保価値を大幅に超える借入はできないのが住宅ローンの特徴です。
事業性を説明していくことで借入額が変わっていくことはなく、あくまで建物の規模と借りる方の個人の評価(職種や勤続年数・年収等)によって借入額が決まっていきます。
そのため、建物の面積や構造が重要なファクターとなります。建物の面積・構造は担保価値の計算の根拠となるものだからです。

建物がどのくらいの規模になる計画か、店舗部分はどの程度の割合になるのか、構造はどういったものになるのか、どの時期に完成を目指しているか、完成時に建物の規模が変わる可能性はあるか…。
金融機関への事前の相談と、計画の進捗の共有は必須です。

建築と不動産のあいだには、資金の調達という手続きがつきものです。それは、建て主と建築家による創造的なプロセスの基礎になります。
そうした手続きを向かい風にするか、追い風にできるかは、家づくりの進め方次第です。
本プロジェクトでは、土地契約の前後での建て主とknofのお二人との協力体制により、追い風にのった家づくりが進められました。

以下、建築家によるテキストです。
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左岸の家

永代橋の近く、江東運河とその先に隅田川を越えて東京都心を臨む、抜けのある敷地に建つ住宅。立地も手伝って「土手」をイメージソースとして計画をスタート、クライアントと侃々諤々つくりあげた。
1Fはテナント貸しとすることでトータルコストのバランスを取っている。創造系不動産さん(担当本山さん)にはローンマネジメントをはじめ、賃貸の募集から契約まで、事業コスト全般にわたってサポートいただいた。

「土手」には、人が過ごすための機能が想定されていないからこそ逆にいろいろな営為が生まれている。そういうことをイメージしながら、施工及びコストから決まった最大ボリュームに、土手のような斜面を折り畳んで流し込むような構成をつくれないかと考えた。実際的には、「階段」を土手の斜面としてそのスケールを伸縮させながら、フラットな床面はむしろ踊場のような階段に近い存在にすることで床と階段の主従を無くし、住戸全体を土手化することを試みた。階段は本来の目的である「上下移動のためのもの」というよりは斜面に近い存在になり、アクティビティは床から斜面にまで拡張され、また折り畳まれたことで多方向への視線や動きを獲得し、結果として75㎡とは思えない生活空間の多様な広がりを獲得できた。

1Fのテナントには「ほんとうにおいしいコーヒー」さんが入居され、地域の住人から世界のコーヒー好きまでが集まる運河沿いの灯台のような場所が育まれている。

knof / 菊嶋かおり・永澤一輝
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▼左岸の家

 

 

▼ほんとうにおいしいコーヒー

  • 住所:東京都江東区
  • 構造規模:鉄骨造 地上3階建て
  • 設計・監理:knof / 菊嶋かおり・永澤一輝
  • 構造設計:OUVI 木佐美慶太
  • ローンマネジメント:創造系不動産 本山哲也
  • 写真:前川明哉
  • ほんとうにおいしいコーヒー」
  • ​内装設計:knof / 菊嶋かおり・永澤一輝
  • ロゴデザイン:NandA
  • 施工:ファーストハウジング株式会社, mujica
  • 賃貸契約サポート:創造系不動産 本山哲也
  • 写真:清澄白河写真室
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