KHAATTの百武けやきさんと田中太雄さんによる自邸、戸建住宅リノベーションプロジェクトです。
お二人は当初から「地域と共生する家」という明確なビジョンを掲げていました。

物件を探すなかでであったのは、東京都調布市にある中古の一軒家です。再開発でまち全体が新しく生まれ変わろうとする活気を感じるエリアで、その家が前面道路に広く面していたことが購入の決め手となりました。

戸建のリノベーションでは、どうしても既存の状態に引きずられてしまう難しさがあります。 けれど今回は、その既存の状態こそが、建築家の構想をより良い方向へと導いてくれる大切な鍵となりました。お二人は内見の段階で、前面道路に広く面したポテンシャルを最大限に活かし、リノベーション後のまちとの関わりまでを鮮やかに見通していたのです。

その見通しに確信を持てたのは、お二人が現地の状況や図面資料、そしてかつての住まいのストーリーを丁寧に読み解いたからこそでした。
購入前の内見に売主が立ち会ってくださったことが、大きな転換点となります。土地の確定測量やホームインスペクションが実施済みであること、そして竣工図が大切に保管されていることが判明しました。リノベーションに適した条件をデータで確認する一方で、建築家自らがその場で基礎や屋根裏を確認し、建物の状態が良好であることを見極めました。さらに、売主から直接「この家でどのように過ごし、どんな思い入れがあるか」という物語を聞けたことは、設計の解像度を高める大きな収穫となりました。
建物が持つポテンシャルの高さ、そして大切に住み継がれてきた空気感。そんな家の良さに確信を持てたからこそ、予算内での計画実現を内見の段階で予測でき、百武さんはその場で購入を決断したのです。
物件購入の入り口から建築家の眼で精査することは、リスクを避けるためだけではありません。建物の良さを最大限に引き出し、味方につけることで、リノベーションの可能性はもっと豊かに広がります。
現在、百武さんはこのまちに暮らしながら住民の方々との繋がりを深め、地域のイベント企画にも携わっているそうです。「地域と共生する」という想いから始まったこの家は、あの日予見した通り、まちにしなやかに溶け込み、新しい風景を生み出し始めています。
建築家の先見性が手繰り寄せたこの住まいが、これからどんな豊かなまちの未来を育んでいくのか、今からとても楽しみです。

以下、建築家によるテキストです。
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私たちは、引っ越す前、openAが改修した「高円寺アパートメント」に住んでいました。
そこには団地構成の賃貸住宅に加え、1Fには住居軒店舗が並んでおり、お店の人をはじめ、住人世帯の約半分の人たちと交流がありました。いざ自邸を持とうと思った時にその交流の楽しさからお別れをするのではなく、新しい拠点で自分たちから交流できるような場所にしたいと考え、戸建て住宅の中古購入に決めました。

私たちが自邸を持つにあたり、新しさと同居する落ち着く家のあり方を考えました。かつてこの家をある「おばあちゃん」が使っていたこと、和室メインで構成されていた既存住宅はどこか懐かしさが残っており、そんな一般的な「おばあちゃん家」に見られるノスタルジーをヒントに設計を行いました。
閑静な住宅街で街との緩やかなつながりをつくりたいと考え、1階は地域に開いた設計事務所と道路に面したキッチンスペースを配した半パブリック空間とし、2階に既存天井懐高さを活かしたリビングや寝室などプライベート空間を固めています。シンプルな素材をベースに巾木や廻り縁を兼ねた縁取り、簡易的な床の間、ガラスブロックを透過した光。そうした緩やかなに上下階を繋げていくことで、ほのかに懐かしく、落ち着きと温度感を加えています。
自然と街に溶け込んでいたかのような「Neoおばあちゃんの家」のあり方を試みています。

  • 住所:東京都調布市
  • 構造規模:木造2×4工法 地上2階建て
  • 設計・監理:KHAATT/百武けやき 田中太雄
  • 施工:高原建設株式会社
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産/飯山理帆 山岸亮太
  • 撮影:小野奈々子