近年、都市部から地方への移住を検討する人が増える中で、「すでに親が所有している土地を活用して住宅を建て替える」というケースが増えてきています。このような計画は一見するとコストを抑えられる合理的な選択肢に思えますが、実際には住宅ローンの利用や不動産登記に関して、いくつかの注意すべき点が存在します。
本事例では、関東から九州へ移住を計画している40代のご夫妻が、親の所有する土地に住宅を新築する際のローンのコンサルティングのサポートをいたしました。
不動産業者が介在しない場合の落とし穴
親名義の土地や建物を利用して建て替えを行う場合、第三者との売買が発生しないため、不動産業者を介さずに進めるケースもあります。しかし、不動産取引の専門家が関与しないことで、重要な手続きやリスクの見落としが起こる可能性もあります。例えば注意が必要なのが、住宅ローンを利用する際の担保提供に関する手続きや、移住がローン審査に与える影響です。
親の名義の土地を担保にする際のポイント
住宅ローンを組む際、金融機関は土地や建物に抵当権を設定することが一般的です。借入申請者が土地・建物の所有者でない場合、所有者である親の同意が必要となります。早い段階で親族とのコミュニケーションや銀行との認識合わせを行うことが重要です。
移住と住宅ローン審査の関係
地方移住の場合には住宅ローンの審査は「収入の継続性」を前提としているため、新居での就労形態や勤務地との距離が重要な審査ポイントになります。近年はリモートワークの普及により柔軟な判断がされることもありますが、職場が遠方にある場合や勤務形態が流動的な場合には、融資が難しくなる傾向にあります。
以下、建築家によるテキストです。
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関東からのUターンをした夫妻のためのスタジオ兼用住宅である。
立地する鳥栖市は九州圏内への輸送拠点としての整備が進み、現在進行形で物流センターの立地と整備が進んでいる。また、福岡市まで電車で40分以内という距離から郊外としての人気が高まり、既存集落の風景と混ざり合った街並みが形成されている。
夫妻が2人で過ごす居間のボリューム、スタジオ部分のボリュームを南北に分けて配置し、その間をキッチン、玄関、水回りのボリュームで繋ぐように計画した。建築の計画規模に対して十分な広さのある敷地だったので、周囲からの目線などプライバシーの確保と充実した外部空間の配置が重要であったが、居間やキッチンからの開放感を重視しながら、周囲からの目線を遮るように郊外の風景にも馴染むコンクリートブロックの塀で庭を囲んだ。
大きな塊ではなく、控えめの3つのボリュームの構成、コンクリートブロックの塀、新旧の住宅の混ざり合う既存集落と郊外の街並みに、違和感なく周囲に溶け込むようなニュートラルな建築としながら、仕事や趣味、毎日の生活や暮らしを詰め込めるような住宅を目指した。
- 住所 :佐賀県鳥栖市
- 構造規模 :木造平屋建て
- 設計・監理:三宅唯弘+水谷元/mt-arc + 水谷元建築都市設計室
- 撮影:針金建築写真事務所 針金洋介
- 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史
- 記事編集:創造系不動産 中村有希