建築家・中村高淑さんの設計による、新築二世帯住宅の計画が進んでいます。
クライアント夫妻と中村さんは美術大学の同期。テニス部で出会って以来、あだ名で呼び合う長年の友人です。夫妻が抱いていた「いつか建築家と家づくりをしてみたい」という夢が動き出したきっかけは、息子夫婦が新しい命を授かったことでした。子育てを見据えて「近くに住みたい」と言ってくれた二人に、夫妻が「それなら二世帯住宅はどう?」と提案したところ、快く受け入れてくれたのです。こうして、二世帯での家づくりが本格的に始まりました。
家づくりの舞台として巡り合ったのは、豊島区東長崎にある土地。東長崎は、妻の祖父母や母たちがかつて暮らしていた地域です。当時この一帯は「池袋モンパルナス」と呼ばれ、多くの芸術家が集う文化の拠点でした。画家だった祖父もその一人です。戦災で作品の多くを失った後は、故郷の山形県鶴岡市へ戻って創作を続けました。
そんな祖父ゆかりの地に、小さなギャラリーを併設した住宅をつくり、鶴岡と東京をつなぐ新たな場を生み出せないか。クライアントはそう考えました。さらにこの地域は、夫が生まれ育った目白にも近く、幼い頃から親しんできた場所でもあります。夫婦それぞれの縁や記憶が重なる地域で、この土地に出会えたこと。それが家づくりの大きな原動力となりました。
▲土地見学中に太陽の軌道を確認する中村高淑さんとクライアント家族
ただ、課題となったのが「53㎡」という敷地面積。二世帯住宅を建てるには一見小ぶりに思える広さでした。
しかし中村さんは「どんな土地でも建てられますよ」と力強く答えます。今回とほぼ同じ敷地面積54㎡の自邸の設計実績を例に、本敷地が2方向接道であることを活かせば、狭いながらも二世帯それぞれの動線、駐車スペース、ギャラリーといった要望も盛り込めるだろう、とアドバイス。その言葉に背中を押され、クライアントは安心して土地の購入へ踏み出すことができました。
ところが、土地の事前調査を進めるとハードルが判明します。このエリアは「最低敷地面積が65㎡」と定められていたのです。最低敷地面積とは、街の安全性や住環境を保つために自治体が定める敷地の最小ルールのこと。原則として指定の面積未満の土地には建築できません。ただし、このルールが定められる前から住宅として使われていた土地であれば、特例として建築が認められるケースがあります。そこで売主の協力を得ながら、当時の資料や古い写真をたどり、規定ができる以前から住まいとして使われていた履歴を調査。役所への確認を丁寧に重ね、無事に建築可能であることを突き止めました。あわせて、敷地が削られてしまうセットバックや隅切りが不要なことも事前に確認でき、限られた広さをフルに活用できる見通しが立ちました。
土地探しの最中に息子夫婦には子どもが誕生。新たな二世帯での暮らしに向けて、和気あいあいと設計が進められています。
~プロジェクト進行中~
- 住所 : 東京都豊島区
- 主要用途:専用住宅
- 敷地面積:53.66㎡
- 設計期間:2026年8月~
- 設計・監理 : 中村高淑建築設計事務所
- 不動産コンサルティング:創造系不動産/飯山理帆