建築家knof(ノフ)の菊嶋かおりと永澤一輝による新築住宅のプロジェクトです。
家づくりにおいて、総予算を「土地」と「建物」にどう振り分けるか。これは、建築家と真っ先に話し合うべき大切なポイントです。今回のクライアントも、あらかじめ予算のバランスを決め、住み慣れたエリアでの土地探しに励んでいました。
しかし、土地情報が出れば即完売する人気エリア。希望予算に合う土地を見つけて一番手で申し込んでも、現金一括で購入する買い手に競り負けてしまうという厳しい現実に何度も直面することとなりました。
背景にあるのは、昨今のインフレの影響です。建築資材だけでなく、土地の価格も右肩上がりの状況が続いています。限られた総予算を「土地」に割くか、それとも「建物」に割くか。どちらか一方が高騰すれば、もう一方が圧迫される。今の時代の家づくりは、まさにこの「せめぎあい」との戦いです。
このプロジェクトを確実に成立させるため、クライアントと建築家が出した答えは、「エリアを最優先するために、土地予算の比重を上げる」という決断でした。
もちろん、土地に予算を寄せれば、建築費に充てられる予算は必然的にタイトになります。しかし、そこを建築家の知恵と工夫でカバーし、理想の空間を目指していく。このポジティブな方針転換が、停滞していたプロジェクトを大きく前進させる鍵となりました。
そうして出会ったのが、北側接道で三方を隣家に囲まれ、正面には9階建てのマンションがそびえ立つという土地でした。一見すると、日当たりやプライバシーの確保が難しそうに思える条件です。クライアントの「ここで本当に心地よく暮らせるだろうか」という不安に対し、建築家が出した答えは「これはいけそう!」という確信でした。
建築家は、土地面積や建蔽率・容積率から、2階建ての構成であれば予算内での実現性を判断。それと同時に、この土地だからこそ叶う「心地よさ」を提案しました。周囲が立て込んでいるからこそ、あえて外へ大きく開くのではなく、隣地との絶妙な距離感を活かして光や風を呼び込む「内側に開く」という発想です。外の視線に左右されず、家族がのびのびと過ごせる居場所を設える。建築家の視点が入ることで、土地の懸念点は、その家だけの個性へと塗り替えられました。
土地選定の段階から建築家が並走し、設計と資金計画をセットでデザインしていくこと。それによって、その場所での暮らしを具体的に描き、確信を持って一歩を踏み出すことができます。
~プロジェクト進行中~
- 住所 : 東京都江東区
- 主要用途:専用住宅
- 敷地面積: 70.44㎡(実測面積)
- 構造規模:木造 地上2階建て
- 設計・監理 : knof 菊嶋かおり 永澤一輝
- 構造設計:OUVI 木佐美慶太
- 不動産コンサルティング:創造系不動産/飯山理帆