建築家 森田悠紀さんが取り組んだ家づくりのプロジェクトです。
このプロジェクトは建て主、建築家、創造系不動産の三者での土地探しからスタートしました。
特殊な土地形状
不動産情報を見ると、変形・どんつきの土地ですが、現地へ訪れると敷地の奥には緑道が広がっている土地でした。
建築を建てるには一見不利とされる土地形状ですが、緑が取り入れられ、同じ目黒区内の他の土地と比べまとまった面積が確保できる貴重な土地です。
緑道との関係
敷地と緑道が接する面は4.5m程度ですが、隣に間口2.5m程度の空地がありました。隣地と緑道の整備の過程で発生した変形地で形状から建物が建てづらい箇所があることが分かりました。どうやらこの部分からも緑道への眺望が望めそうです。
不動産情報が表現しきれない敷地状況を、実際に現地に赴いて、建築家・クライアントと共に読み解くことで、緑を眺められる住宅が生まれました。
―――――以下建築家のテキストです―――――
守られながら開かれる、あわいの空間
木々への眺望がある候補地を建主と巡り、辿り着いたのが緑道に面したこの敷地だった。川が暗渠化されてできた緑道は南北の台地に挟まれた谷地にあたり、敷地も道路から緑道へ向かって1mほど下がっている。敷地は袋小路の最奥にあるため付近に車の通過交通はなく、都市の喧騒から離れた静かな環境であった。
一方、緑道には歩行者の往来があり距離も近く、ただ開くのではなく適切な関係を築く必要があった。そこで緑道に直交する壁柱の列柱を設け、壁柱に沿った視線の抜けを確保しつつ斜め方向の視線を遮ることで、守られながら開かれる空間を目指した。同時に壁柱は構造上の要となり、半間間隔の柱割りは耐熱強化ガラスによる大きな開口を可能にしている。平面は不整形な敷地に沿うように雁行させ、敷地形状がもつ対角線方向の抜けを活かした。
断面計画では地形に呼応し、緑道へ視線を導く2枚の屋根を架け、厳しい斜線制限を躱しつつ、低い軒で北側建物からの視線を遮り、落ち着いたスケール感を実現した。また敷地は内水氾濫による浸水が想定されているため、高基礎にしながらも、量塊感のあるコンクリートで内部を囲い込むことによる安心感をもたらした。
敷地によるさまざまな条件に向き合った結果、建ち現れたのは雁行する列柱がつくる回廊のような空間であった。回廊は古くから異なる領域を隔て繋ぐ役割を果たしてきたが、ここでは街や緑道と住宅が接するあわいの空間として存在する。
建主は、この家では時間の流れがゆっくりと感じられると語った。壁柱による奥行きのある開口は、緑道と室内という異なる領域を際立たせ、風に揺れる緑道の木々や人の動きを鮮明に切り取る。一方、内部の静けさはその対比によって引き立ち、洞窟の中から外界を眺めるような初源的な感覚と共に、意識は今という瞬間へ開かれていく。
かつての川は人びとが行き交う緑道へと姿を変え、この家もまた庭木の成長と共に緑に包まれていく。こうした変化の中で、建築が変わらず人の感覚を「今」へと導く存在となることを目指した。
- 住所:東京都目黒区
- 構造規模:木造軸組工法 地上2階建て
- 敷地面積:123.87㎡
- 建築面積:69.81㎡
- 延床面積:127.79㎡
- 設計・監理:森田悠紀建築設計事務所
- 写真:西川公朗
- 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史
- 記事編集:創造系不動産 中村有希