建築家の青木真研究室の青木真さんが手がけた、東京都練馬区の新築戸建住宅のプロジェクトです。

計画地は、第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に指定された住宅地内の小さな敷地、面積は約49㎡、間口は約4.5mで、ファミリー層が新築住宅を検討するには、面積・形状ともにハードルが高いとされる土地です。

しかし、敷地前面は緑道に面し、幅員は12Mであるために道路斜線が緩い敷地となっており、一般的な道路付きの区画とは異なる開放感がありました。

車の出入りが少ない環境は、静かで、安心感があり、視覚的にも心理的にも余白のある条件となっていました。

建築基準法上の容積率制限により、延べ床面積の上限は49㎡で数字だけを見れば、家族が住むには到底十分とは言えない広さでした。しかし、これはあくまで法律によって規定される面積であって、空間体験としての広さや豊かさを定義するものではありません。

今回のプロジェクトでは、容積率不算入となる半地下空間を積極的に活用し、吹き抜け、視線の抜けや天井高さの緩急といった断面操作を組み合わせることで、空間の体積を増幅し、法定面積を超えた広がりを獲得しています。

制度との対話を通して空間の可能性を見出す設計者の想像力と、物件の価値を数値的指標でとらえがちな不動産的視点とのあいだにあるギャップを浮かび上がらせます。

数字の裏側にあるポテンシャルを掘り起こし、制度を乗りこなすことで、住まいの質は大きく変わります。限られた敷地条件においてこそ発揮される、建築家の視点と技術がこの住宅には詰まっています。

以下建築家によるテキストです。

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「RPG的世界感覚と住宅設計」

昔からゲーム、とくにFFをはじめとしたRPGが好きだった。RPGの世界が実世界と最も違う点は、他人の家にもずかずかと入っていけるところだ。つまり、内と外という区別が無くシームレスに繋がっていて、そのなかにゲームならではの特徴的な場が散りばめられ、物語が展開していく。

こう考えると、実は実世界も同様なのではないかと思えてくる。内と外というのはあくまでも社会的な取り決めなのであって、空間は連続している。そのなかでそれぞれの空間は固有の形態・素材・色・温度・湿度・日差し・風向・風量・方位・位置・香り(微量な化学物質)等の物理的・化学的状態によって規定され、屋外・屋内の区別はない。

このような感覚、すなわち前提としてシームレスな世界の中で物質的環境を操作して多様な場を生み出す感覚をもとに設計をおこなった。正面の緑道に面して隙間なく立ち並んでいる周辺建物に対して、セットバックしてテラス・前庭とした。緑道の木々と呼応する不定形の立面と、時間変化する自然素材のファサードとした。大きさ・高さの異なる多数の窓を通して東・西・北面から差し込む自然光は刻一刻と表情を変え、多彩な光環境のニッチを生む。

それぞれの場所がその時々の人の気分と結びつき、豊かに変化する生活が進んでいくことを期待した。

  • 建築:青木真研究室/ 青木真
  • 構造:山辺構造設計事務所
  • 施工:栄伸建設
  • デッキ・家具:西村俊貴
  • 写真:日吉祥太
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産/山岸亮太