建築家tombow Architectsの小林佑輔さんと合同会社スナバの長谷川祥さんの筑波市の新築住宅のプロジェクトです。

ライフプランや資金計画、理想の暮らしなどを整理しながら、クライアントと建築家と対話を重ねていく中で、クライアントは趣味であるキャンプの道具の整理と大きな車を駐車できる、一般的な住宅用地よりも外構部の面積が大きい土地が必要ということが分かりました。

たどり着いた計画地は、筑波市郊外の間口面が7M、反対の面の長さが10Mと東西に細長い末広がりの台形の土地でした。

また周辺では広くてプライベート確保がしやすい正方形に近い土地が求められる傾向の中、この土地は、筑波エリアとしてはやや細長い形状をしていました。

さらにこの土地は、両側建物も敷地いっぱいに既存家屋が建っており、日影ができやすく、南側に十分な庭を設けたとしても採光を取りづらい敷地でした。

郊外の比較的土地に余裕のある住宅地が多い中で、こうした条件の土地は、周辺の似た面積の土地よりもやや安価に取得できる場合があります。

そんな中、建築家は、道路側にはしっかりと駐車スペースを確保できるように西側に寄せながら、1階は敷地の南側の境界に沿わせる配置、2階は敷地の北側の境界に沿わせてセットバックさせたプランとし、そのボリュームのズレの箇所に設けられた吹き抜けから採光を取る形式の住宅としました。

それにより生まれたダイナミックな空間は、明るく断面的にもメリハリのあるリビングになりました。またズレによる2階の北側にはみ出したボリュームは、軒下空間として玄関と外構空間を繋ぐアプローチの機能を果たす場所として計画されました。

イレギュラーな変形の敷地を、建築家がうまく解きほぐしながら、クライアントの理想を実現する建築ができたのは、建築家と不動産が同じゴールを目指して並走したからこそ成立したプロジェクトです。

以下建築家のテキストです――――――――――――――――――――――――――

つくばエクスプレス沿線は近年流山や柏の葉を筆頭に住宅開発が進み子育て世帯が増えている。敷地最寄りの駅前もこの2,3 年で駅前整備に連動するかたちでハウスメーカーの住宅が並ぶ風景となったが、駅から少し離れた位置にあるこのエリアは古くからある住宅が多く残っている。

敷地は東西方向に細長く南面に隣家が迫っているため、日照をいかに確保するかが大きな課題となった。間口が狭いとは言え都心部に比べると余裕があり、接道面の間口が約7m で奥側では10m と台形状に広がっている。この3m を余剰と捉えボリューム検討を行った。

駐車台数や趣味のキャンプ道具の管理のために、外構に広くまとまった面積を必要としたこともあり、建物ボリュームは極力シンプルにかつコンパクトにまとめた。

1,2 階でボリュームをそれぞれ敷地形状に添わせるようにずらすことで、南面での隣地からのセットバックをつくりハイサイドライトを持った大きな吹き抜け空間を設けた。各室の採光をそれぞれに考えプランを組み立てるのではなく、最大限明るい気積を確保する外壁をまず立ち上げ、その気積に面して各機能が展開していくことを考えた。

同時に外部側で生まれる軒下空間では、玄関ポーチ、車の積荷、勝手口の庇など雨よけを必要とする機能がずるずると繋がっていく。

更地の時点では日陰の範囲が半分を占め陰湿な空気を感じる土地であったが、建築が建ち上がることで内部空間だけでなく、周辺からの見えとしても明るい場所へと転換させることが出来たと感じている。

  • 住所:茨城県つくば市
  • 主要用途:住宅
  • 構造規模:木造地上2階
  • 建築面積:86.52㎡
  • 延べ床面積:111.29㎡
  • 設計・監理:tombow architects ×合同会社スナバ
  • 構造設計 oha/長谷川理男
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史
  • 施工:渡辺建工
  • 写真: 山内紀人