ここでは、2025年11月27日発売の『設計者のための建築不動産コンサルティングのはじめかた』(学芸出版社)について紹介します。
『設計者のための建築不動産コンサルティングのはじめかた』
プロローグ
「設計の前段階」ですすみゆく変革
「建築と不動産のあいだには壁がある。
しかし、建て主にとっての本当の価値は、そのあいだに隠れている―」
私が不動産コンサルタントの立場から、
業界の構造や商慣習を多面的に触れた書籍『建築と不動産のあいだ』を
2015年に出版してから、はや10年が経ちました。
果たして、そんなテーマに関心をもってくれるひとがいるのかどうか、
当時はまったく予想もつきませんでした。
しかし、日本中の建築と不動産の専門家たち、
なかでも建築設計事務所のみなさんに支えていただき、
刊行後、多くの方に読まれ、版を重ねることができました。
そしてこの10年間は、私たちも含めた日本各地の多くのプレイヤーが、
その「壁」を跳び越えようとする実践を積み重ねてきたのです。
あいだの「壁」はいまだに残る
かつての、建築設計は建築設計、不動産は不動産と、
明確に分業されていた時代から、近年では
住宅、店舗、オフィスといった用途を中心に、
建築と不動産を一体的にとらえ、企画やデザインが
統合的に進められる実践が、全国で広がっています。
両者を混ぜ合わせて、もしくはそれぞれの専門家がタッグを組んで、
新しい価値を生み出していくことの可能性を、目の当たりにしてきました。
基礎的な技術や根本的な価値観を、建築と不動産の双方が
互いに理解し合い、協働して建て主に貢献する。
そうすることで建て主が得る価値、成果、そして利益の大きさ。
その可能性を、私はさまざまな現場で伝えてきました。
そして確かな成果が少しずつ形になってきたと感じています。
だからこそ、こうした実践をもっと広げていきたいのです。
むしろ日本は、「小規模な建築と不動産のチームがうまく連携し、
力を発揮している国なのだ」と諸外国から参考にされる存在に
なっていける、私はそう考えています。
ただし、そうした協業がすでにスタンダードになったかというと、
おそらく全体のなかでは、まだまだ1%にも満たないでしょう。
建築と不動産のあいだには、依然として決定的な「壁」が存在しており、
特に中小規模の事業者において、その傾向は顕著です。
この業界は「市場分散型」で、大手による寡占化が進みづらい
という特性があるため、構造的に建築と不動産のあいだの溝が
埋まりにくいのです。
しかしいま、様々な経営環境の変動を背景に、その「あいだ」に
新たなターニングポイントがやってきました。
それが一体どのようなものであり、なぜいま起きているのか。
それは本書を読み進めていただければ、はっきりと見えてくるはずです。
「建築企画」と「不動産コンサルティング」のあいだ
「寡占化されない市場分散型の業界」をポジティブにとらえるならば、
建築設計業界には、大手企業だけではなく、小規模、または個人の設計者が
日本各地のエリアに存在し、地域住民や企業にとっては、
相談できる窓口が多数ある、ということでもあります。
建築設計から建物に関わる日常的な相談まで、対応できる人が
身近にいるという状況は、日本ならではの良さだと、私は感じています。
確かに海外と比較し、またほかの士業に比べると、日本には
設計者の数が非常に多く、競争が激しく感じられ、「持続的に稼ぐのが難しい」
とネガティブに捉える意見も聞かれます。
ですがその一方で、設計者が身近だからこそ「設計の前段階」から
プロジェクトに関わることが増えている、という実感があります。
ここで改めて、建築と不動産の「あいだ」をよく見てみましょう。
本書が扱うのは、集合住宅や商業施設、企業のオフィスといった
事業系建築の「設計の前段階」です。
そこに位置する、「建築企画」と「不動産コンサルティング」という
2つの領域を結びつけるための方法論です。
本来、この2つは突き詰めればかなり似通った領域です。
にもかかわらず、なぜこれまで同時に語られてこなかったのか。
その理由は、いまだ明らかにされていません。ただ、両者のあいだには
確かに「壁」が横たわっていると、ひとまずはそう言っておきます。
そしてこれらが結びついた職能、またはチーム、あるいは横断的に
プロジェクトを成功に導こうとする意思を持つ者を、本書では
「建築不動産コンサルタント」と呼んでいます。これが本書のテーマです。
聞きなれない方には、やや難解な専門技術のように感じるかもしれませんが、
決してそうではありません。
新しい技術が発見されたわけではなく、10年前と変わらず、
やはり「すでにあるものを角度を変えて見ている」だけのことなのです。
つまり、建築設計と不動産取引、それぞれのごく基本的で当たり前のことについて、
少し視点を変えるだけで、これからの時代に必要とされるスキルとして、
実務に生かせるようになります。
(最初の3ページだけ掲載しています。)
続きについては、後日掲載する可能性があります。
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