創造系不動産が創業して12年を経た2023年に、Webページを初めて大幅にリニューアルしました。それまでのページとは構成が大きく変わり、「不動産の仕事・教育と学び・創造系で働く」という3つの軸で、創造系不動産がどういう考えを持っていて、何をしようとしているのかを、より具体的に説明するように記載しました。

トップページにあるように「建築と不動産のそれぞれの専門家がタッグを組み、建て主と伴走する」。それが私たちの理想の方法なのですが、残念ながら「建築と不動産のあいだには大きな壁がある」ため、それが一般的にはほとんど実現できていない。そこが日本の課題であり、創造系不動産はそこにイノベーションを起こす会社です。これは創業時から変わらず言い続けていることです。しかし、この効果を分かりやすく説明することが本当に難しく、創業した2011年から数年は、きっと分かりにくい会社だったのではないかと思います。

当時を振り返ると、最初から掲げられていた「建築と不動産のあいだを追究する」という経営理念でありコンセプトが、そもそも分かりにくかったと思います。それはそうでしょう。「建築」と「不動産」が並置される意味が、多くの人には分からないからです。それらが、例えば働く人材のタイプや、仕事をする価値観といった面では、対極的な位置付けにある領域であるということを、私たちは知っています。しかしそれは私が両方の現場で働いたからこそ、たまたま分かったことに過ぎず、それをうまく説明する準備が間に合っていませんでした。しかも、その2つの領域の「あいだ」と、文字通り中間領域をテーマにしているため、かなりあやふやというか、抽象的に聞こえます。

何れにしても、一部の勘が鋭い若い建築家や、建築と不動産の乖離に課題を感じていたわずかなイノベーターを除いて、私たちは「建築と不動産のあいだ」のことを、また創造系不動産という会社の意義について、あまりうまく説明できていなかったと思います。それでも数十名の仲間の建築家たちが、ありがたいことに私たちを信じて、土地探しやマンション探しの依頼を頂きました。一度ご依頼頂き、実務の中で「建築と不動産がタッグを組むこと」の多面的な価値を実感して頂いた建築家たちは、繰り返しリピートしてお声がけを頂きました。

建て主、設計事務所、私たちにとってのメリット、建築と不動産のあいだの価値を、実務の中で一歩ずつ踏みしめるように確認していく時期でした。逆に言うと、いちど仕事をご一緒してようやく理解して頂けるという、説明の難しさがやはりありました。当時の創造系不動産のWebページは、経営理念と、建築家と不動産やお金の面で伴走したケーススタディが10件程度、これがほぼ全てだったと思います。とにかく実例を見せて、それらメリットや価値を広げたいと考えていました。

流れが変わったのは、2015年に学芸出版社から『建築と不動産のあいだ』という緑色の著書が出版されたことです。創造系不動産の経営理念と同名のこの書籍で、建築と不動産のあいだとは何か、なぜ必要なのか、建築家に不動産コンサルタントが付くと、建て主への価値提供がどう変わるのか、これらを、理論と実例で余すことなく書き切ることができました。この書籍の執筆を通じて、Web中でも説明されている建築+不動産の定番フロー「VFRDCM」が生まれました。建築界でもまだ未確定なものであった私たちに機会を下さった、学芸出版社には最大の敬意を表します。予想以上の書籍の反響と共に、おかげ様で第6刷まで重版されています。

ようやく「建築と不動産のあいだ」の説明材料がそろいました。これで仕事が増えたかのかというと、そうはなりませんでした。まず増えたのは、創造系不動産で働いてくれる仲間でした。「書籍を読んだ。これからの時代に必要だと思う。そして自分もその技術を身に着けたい」。嬉しいことに、若い仲間がどんどん集まりました。できる限り採用して、共に、意味や意義を伝え導く役割を任せました。その後は、加速度的に創造系不動産に声をかけて頂いた設計事務所は、出版から1~2年で100を超え、この新Webページがリニューアルされる直前には、350を超えました。創造系のメンバーとその話を聞いてくださった建築家の皆さんにも、感謝しかありません。

でもまだまだ、私たちの説明は十分ではありませんでした。建築と不動産のあいだの領域で一定の成果が上がったからこそ、逆に自分たちでは分からなくなってしまった、不十分や課題があるはずです。多くの優秀な方々や、新しい領域を開拓するプレイヤー、そして創造系不動産の若いメンバーに、意見を聞きました。そして、今回の新Webの「不動産の仕事・教育と学び・創造系で働く」の構成に辿り着きました。

私たちは今後も変わらず少数精鋭ではありますが、創造系不動産を勤め上げ建築×不動産のビジネスで独立起業したOB達とも協力して、近い将来は1,000を超える設計事務書をサポートさせて頂くよう、拡大して行きたいと思います。そうすることで、私たちが掲げる「建築家と不動産コンサルタントのコラボレーションを日本のスタンダードにする」という理念を実現させ、建て主や社会にとってより良い建築を生み出す仕組みづくりの一助になりたいたいと思います。

このエッセーでは、Webページの業務説明やケーススタディでは伝え切れないことを、様々な視点から補足したいと思います。不定期にアップされる予定ですが、ぜひご覧いただければ幸いです。