“価値が続く住宅”のつくり方セミナー

―住宅の価値は、完成した時点で決まるのか?―

2026年7月10日、リビングデザインセンターOZONEにて、「“価値が続く住宅”はどうつくるのか―環境と外構から考える住まいの設計―」が開催され、ビオフォルム環境デザイン室代表の建築家・山田貴宏氏と高橋寿太郎が登壇しました

「“価値が続く住宅”はどうつくるのか―環境と外構から考える住まいの設計―」
開催日:2026年7月10日 (金)
会場:東京都内
主催:リビングデザインセンターOZONE

 

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イベントは、山田貴宏氏による設計思想と作品の紹介、高橋寿太郎による創造系不動産の活動紹介、そして両者のクロストークという三部構成で進められました。

山田氏は、大学で環境について研究し、その後も環境と建築の接点を自身のテーマとしてきました。
その設計思想を支えるものの一つが、自然界の循環や多様な要素のつながりを手本とするパーマカルチャーです。山田氏は、土、水、植物、生物などの関係を人間の暮らしや建築へ応用し、建築を自然や地域をつなぐ結節点として捉えています。
茅葺きの民家のように、地域の素材を使い、手入れを通して風景を守る暮らしも、その考え方を示す一例として紹介されました。

レクチャーでは、「藤野の家」「足立エコアパート」「里山長屋」など数多くの作品が紹介されました。そこでは、菜園や土間、共有空間、プロセスなどを通じて、住まい手が自然や地域に関わる余地がつくられています。
作品に共通するのは、建物を長く残すだけでなく、建築を起点として、時間をかけて暮らしや風景を育てていく考え方であり、それは建物を100年残すだけではなく、100年かけて風景をつくるという姿勢です。

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続いて高橋から、創造系不動産の活動が紹介され、優れた建築も、資金や運営、流通の仕組みがなければ、社会のなかで長く使い続けることは難しく、建築的な価値を不動産の仕組みへつなげることも、住宅の価値を持続させるための重要な役割であると話します。

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クロストークでは、高橋が、山田氏の活動が多面的でありながら一貫して見えることに触れ、なぜ山田氏の仕事が継続的に求められ、結果として住宅の価値につながっているのかを尋ねました。
山田氏は、価値を高めること自体を目的に仕事をしてきたわけではないと答えます。一貫して取り組んできたのは、環境と建築の関係性を掘り下げることであり、それを長く続けてきた結果、その考え方に反応する住まい手や事業者、土地所有者が現れたのではないかと語りました。

対話はそこから、住宅を所有することと、使い続けることの違いへと広がります。これまでの消費は、ものを所有することに価値を置く「ソリッド消費」を前提としてきました。一方、現在は、所有そのものよりも利用や体験を重視する「リキッド消費」へと、消費のあり方が変化しているといいます。
その変化を考えるうえで、山田氏は子どもの頃を過ごしたイタリアでの経験に触れました。そこでは、100年経っても大きく変わらない街並みが人々の暮らしを支え、「自分はこの場所に属している」という帰属意識を育てていたといいます。住宅や街の価値は、所有することだけでなく、世代を超えて使い続けられ、そこに暮らす人の記憶や愛着が積み重なることで生まれていくのです。

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今回のイベントを通して見えてきたのは、住宅の価値を完成した時点で確定させるのではなく、時間のなかで育てていくという考え方です。
「価値が続く住宅」とは、完成時の価値をそのまま保存する住宅ではありません。住まい手が手を入れ、自然や地域と関わり、異なる世代が使い継ぐことで、長期的な価値を育て続けられる住宅なのではないでしょうか。

文:創造系不動産 末松拓海