丘陵地に造成された住宅地。その外周部に位置する敷地は、南北に約5.3mの高低差を抱え、敷地中央には既存擁壁が存在していました。
建て主ご夫婦は、いわゆる整形地ではなく、「クセのある土地だからこそ生まれる空間」に魅力を感じており、建築家とともに土地探しを行っていました。創造系不動産も初期段階から伴走し、建築家・建て主・不動産コンサルタントの3者で候補地を検討しました。
その中でであったのが、この高低差と擁壁を抱える敷地でした。一般的には敬遠されやすい条件でしたが、建築家はこの地形をネガティブに捉えず、崖を駆け上がるような空間構成の可能性を見いだしていました。
一方で、不動産・法務・安全性の観点では慎重な検討が必要でした。
敷地内擁壁については検査済証は確認できたものの、当時の図面は残っておらず、隣地擁壁については届出自体が存在しない状況でした。
役所調査には建築家にも同行いただき、擁壁の安全性、建築可能な配置計画、構造的成立性、法令上の扱いなどを購入前段階で詳細に確認しました。また、将来的に必要となる可能性のある補強・造成コストも織り込みながら全体予算を整理し、建築計画と資金計画の両面から成立性を検証。「この土地なら、建築的価値とリスクのバランスが取れる」という判断のもと、購入へと進むことができました。
完成した「登間の家」は、この既存の高低差を全面的に活かし、段状に連なるひとつの大きな空間として構成されています。
大きな空間の中に、各層ごとの大きなレベル差によって、光の入り方、空気の流れ、外部との距離感がそれぞれ異なる居場所を生み出しています。
ニジアーキテクツにより、擁壁を抱える高低差のある敷地制約を、その土地にしかない風景や地形を空間へ変換されました。
土地探しから建築・ファイナンスまでを一体で伴走したからこそ実現できたプロジェクトです。
- 用途:専用住宅
- 敷地面積:159.78 ㎡
- 建築面積:76.10 ㎡ (建蔽率47.63%/許容60%)
- 延床面積:100.16 ㎡ (容積率62.69%/許容150%)
- 構造・規模:木造在来工法/地上2階建て
- 設計・監理:原田将史+谷口真依子/ニジアーキテクツ
- 構造設計:平岩構造計画
- 施工:佐久間工務店不動産コンサルティング:創造系不動産 井上遼介
- 掲載:『新建築住宅特集』2026年3月号