ICADA設計による、埼玉県さいたま市に建つ木造新築住宅です。

複雑な形状の旗竿地の魅力を、建築と不動産のあいだの視点で読み解き、ビジョン・ファイナンス段階から、木材の調達方法を見据えて計画しました。

建て主が見つけた土地は、周囲に住宅が密集して建つ、住宅地の一画。接道する細長い路地が屈曲し、さらにその奥が旗竿地になっている複雑な形状の土地です。

一般的な不動産市場では整形地が好まれるため、この不整形な土地は約十年間取り残されていました。

しかし、建築家が現地を訪れた際、通常の不動産情報だけではわからない土地の可能性を発見しました。

敷地の奥が別の道路と接道しており、通り抜けられること。建物が密集しているが隣地はカーポートで、視線の抜けが得られること。おもしろい建築ができる可能性がある、開放的な土地であることに気づきました。

不動産市場では価値が低く見積もられる土地でも、建築と不動産のあいだの視点で見れば、その転換が起こります。

 

不整形な土地の場合、購入前に施工の際の資材搬入できるかどうかを確認することもポイントです。

今回は、接道する路地は細長く湾曲しているため、工務店と現地で相談し、裏側の道路から資材を搬入することで、施工が可能だと判断しました。

また通常、旗竿地の場合は竿部分には建築せず、建築可能なスペースが限られることが課題です。

今回、建築家はそれに対し、竿部分の2階に書斎兼クローゼットを設けて宙に浮かせ、その下をピロティにしました。この「スカイウォークインクローゼット」により、アプローチを確保しつつ、敷地全体を有効活用することが可能になっています。

 

このプロジェクトのもう一つのポイントは、資金計画の段階から建築家がどんな木材を使いどう調達するかを見据えていたこと。

プロジェクトが始まったのはちょうどウッドショックが始まり、木材の価格が高騰した頃でした。そこで建築家は、林業の現場で十分に活用されていない「大径木」を全面的に使うことにしたのです。

大径木とは育ちすぎて加工できる機械が少なく、安価に出回る材。熊本にある大径木を製材加工できる会社と連携し、大径木をスライスして全面に使うことを初期段階から見据えて計画しました。

その結果、コストを抑えながら、大径木の特性を活かした表情豊かな木造住宅が実現しました。

建築家と不動産コンサルタントが協働し、土地や予算の与条件を制約として捉えるのではなく、設計の一部に取り込むことで、建築の可能性を広げ、建て主のメリットを最大化する住宅ができ上がりました。

以下、建築家によるテキストです。

——

路地が屈曲する旗竿敷地に建つ住宅です。持続可能な林業のために積極的活用が求められる杉大径木を、歩留まりに優れる「だら挽き」という製材方法で加工しています。これが、住宅の構造になり、仕上げにもなるというアイデアで、同時にローコスト化にも貢献しています。敷地の整形部分には、木の素材感が際立つLDKと寝室、子供室を配置。路地部分は木柱が並ぶピロティとし、その上にウォークインクローゼットを浮かべ、先端に街路を望む小さな書斎を設けています。(岩元真明/ICADA)

——

  • 住所: 埼玉県さいたま市
  • 主要用途:専用住宅
  • 敷地面積:132.37㎡
  • 建築面積:68.62㎡
  • 延床面積:112.98㎡
  • 構造規模:木造 地上2階
  • 設計・監理:ICADA 岩元真明 千種成顕
  • 構造:荒木美香構造設計事務所 荒木美香
  • 施工:榊住建
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 山岸亮太
  • 竣工年月:2024年3月
  • 掲載:新建築住宅特集2024年6月号
  • 日経アーキテクチュア 2024年9-12号
  • 内観写真撮影:表恒匡
  • 外観写真撮影:新建築社写真部
  •  
  • 記事編集協力:玉木裕希