京都市内の住宅地に建つ、木造3階建て住宅のリノベーションプロジェクト。
西原将さん(スタジオパルコマン)と、施主でもある安田渓さん(京都大学建築学専攻助教)による共同設計です。
創造系不動産は、不動産仲介と資金計画のサポートを行いました。
施主ご夫婦とも今後転勤の可能性があり、一般的な住宅資金額で住宅ローンを組むと、その後の身動きが取りづらくなってしまうため、プロジェクトの予算を抑えることがライフプラン上の要件でした。
また、通勤と将来の住み替えの可能性のため、ある程度良い立地条件の物件を探していました。
そのような観点で見つけたのが、京都大学からほど近い吉田本町に建つ中古戸建です。
不整形敷地であり建て替えが難しく、採光や眺望の取りづらいうえ、既存建物は経年による劣化と光が届きにくいことによる暗さがありました。
そのため一般的な不動産市場では価値が低く見なされがちで、1年以上売れ残っている物件でした。
しかし、建築家が土地の購入前にボリュームスタディを行うことによって、この土地と建物に可能性を見出しました。
そして空間の使い方と同時に、コストに関しても検討を重ねました。
それをもとに創造系不動産が資金計画サポートを行いました。
今回は、自己資金で土地と建物を取得し、リノベーションローンにて工事費・設計費を借り入れて充当する方式を採用しました。
この物件に限らず、築年数のある住宅では、建築当時と現在の基準に違いがあったり、そもそも建物の適法性を証明する資料がなかったりして、一般的な住宅ローンが利用しづらいケースがあります。条件に応じて、適切な資金計画を行うことがプロジェクト成功の要の一つとなります。
西原さんと安田さんは土地と既存建物を読み解き、外と内の関係性を更新し、住み手が手を加えられる余地を残すリノベーション設計を行いました。
既存の開口部や外壁は、ほとんどをそのまま生かしつつ、玄関の位置を再構成。
内部は、空間の仕切りや床のレベルを変えることで、心地良い伸びやかな生活空間が生まれています。
一部は自主施工により、時間をかけて改修工事が行われました。
経年により取り扱いが難しく見なされがちな物件であっても、建築家の視点で既存建物や敷地条件を丁寧に読み取り、手を加えることで、空間の価値は更新しうる。
本プロジェクトは、そのことを示しています。
以下は西原さん(設計者)と、安田さん(設計者 兼 施主)それぞれによるテキストです。
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使う人が手を入れられる余地をつくっています。一部床を撤去し吹き抜けをつくっていますが、その大きい空間の壁と天井を石膏ボードだけでつくってしまうと、手を入れにくい感じがします。高基礎部分で上下に分割と奥行きをつくり、付け柱で横にも分割をつくります。付け柱は天井近くの長押で切れています。長押は配線経路にしたり、物を置いたり何かと使えます。空間は後退し、さわれる感じになってきます。
既存の窓が面白くなるように新しい玄関や窓をつけることで、不思議な佇まいをもった外観と、見る場所によって外の景色が変わる体験をつくっています。〈西原将〉
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この家では、外にある吉田山や隣家の植栽、通学する小中大学生の行き交うアスファルトも借景としながら、自分たちで設えた棚や季節の植物を窓の手前に飾って、家族と食事し遊び、またPCをみつめて作業しコーヒーを淹れます。目線が合わないように窓と床の高さを調整しているのでカーテンは引かずに天気と季節の移ろいを感じます。道路からは夕方は料理する手元が見え、たまに友人と宴会している光景が垣間見えます。
家の中のさまざまな視点からの眺望と自主施工することとしたものが見えかくれし、住み手にとって意味の奥行きを生む設計となっています。〈安田渓〉
- 住所:京都府京都市左京区吉田本町
- 構造規模:木造 地上3階建て
- 主要用途:専用住宅
- 延床面積:52.3㎡
- 設計・監理:西原将(スタジオパルコマン) + 安田渓(京都大学建築学専攻助教)
- 構造設計:三崎洋輔(EQSD)
- 施工:内田工務店 内田誠二
- 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史 田中太雄
- 竣工:2025年6月
- 建築写真:倉本あかり