建築家のnear architects(ニアアーキテクツ) 森田信太郎さんと森田ひかりさんが手がけた、神奈川県川崎市の新築戸建住宅のプロジェクトです。

クライアントの要望は、日常から離れた秘境のようなプライベート空間を持つことでした。

土地探しを進める中でであったのは、周囲に竹林や畑が広がる、斜面を含む3区画(A,B,C)の敷地でした。その中で、最も広く敷地のほとんどが斜面となっているC区画に、クライアントと建築家の目が留まりました。

一般的に建築難度が高く敬遠されがちな斜面地ですが、建築家はこの地形のポテンシャルに着目しました。建築家は、高低差を活かして近隣住宅と高さ関係をずらすことで、周囲の自然環境を独占するかのようなプライベート空間を提案しました。ゆとりある広い敷地では、住宅部分以外の空間を贅沢に使うこともできます。

また、C区画は建築難度が高いため、平地を含むA,B区画と比べて土地価格が抑えられており、その分、建築費に予算を割くことが可能でした。これにより、建築家の提案を活かしたこの土地ならではの生活を実現することができます。

土地選定の段階から建築家が関わり、設計と資金計画を一体的にデザインすることによって、クライアントは自分たちに合った暮らしのイメージを具体的に描くことができました。

以下、建築家によるテキストです。
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多摩丘陵の西側斜面に建つ、夫婦ふたりのための住宅である。ふたりは日常の大半を自宅でのオンライン業務に費やし、週末は都心を行き来する。都市への利便性を考慮しつつも、緑豊かで秘境のような環境を望んでいた。
初めて訪れたふたりの住まいはメゾネット型のマンションで、互いに過度に干渉することなく、自立した生活を送る姿が印象的であった。
敷地は川崎市高津区の多摩丘陵に残された急な西向き斜面にある。東側道路から約6m下がり、さらにその先で約3m低い隣地へと続く。西に富士山を望み、北の中景には湾状の地形に抱かれたふれあいの森が広がり、足元には斜面地形が流れている。異なるスケールの風景が同時に立ち現れることが、この土地の魅力であると考えた。
そこで建築によって地形を分断するのではなく、東側道路から西側の風景へと連なる地形の流れを保つことを考えた。建物中央を斜面地形が抜ける構成とすることで、建築は南北二棟に分かれることになった。建物の基準高さは道路から約2m下がった小さな平場に設定し、造成を最小限に抑えながら建物全体の高さも抑制した。さらに駐車スペースを確保するため建物の南東を起点に回転させたことで北棟は斜面上へ張り出し、南棟は平場にとどまる配置となった。
建物中央を斜面地形が抜けることで生まれた分棟構成は、夫婦それぞれの仕事場を南北に配置することで、互いに自立して働く夫婦の生活様式に寄り添っている。また、浴室やトイレ、クローゼットを含む生活動線を上空で架け渡すことで二棟を結んだ長い廊下は、西日を和らげる温熱環境の緩衝帯であると同時に、富士山や森を眺める展望の場にもなっている。
地形や風景を丁寧に読み解くことで、異なるスケールの風景が重なり合うこの土地ならではの、働きながら暮らす住まいのあり方を考えた。

  • 用途:専用住宅
  • 計画地:神奈川県川崎市
  • 敷地面積:261.73㎡
  • 建築面積:58.58㎡
  • 延床面積:92.07㎡
  • 構造:木造・一部高基礎
  • 規模:地上2階建て
  • 設計・監理:near architects/森田信太郎・森田ひかり
  • 構造設計:楠本玄英構造設計事務所
  • 施工:有限会社 隆栄建築
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産/山岸亮太、飯山理帆
  • 記事編集:創造系不動産/飯山理帆
  • 写真:中山保寛
  • 設計期間:2024.10-2025.06
  • 施工期間:2025.07-2026.01