CASE STUDY73和食 板垣・辻・場

buttondesign村上譲 菊田康平設計による足立区千住の古民家、昭和13年に建築された旧板垣邸を和食店へ再生するプロジェクトです。

不動産の所有権移転、不動産売買契約をサポートさせて頂きました。

以下、建築家によるテキストです。
この昭和13年築の古民家再生プロジェクトが始まったのは、まだ新型コロナウイルスによる世間の混乱が始まる前の2019年夏、
旧板垣邸の目の前で生まれ育ち、江戸時代から現在までこの地で商売をしている葬儀社の社長でもある現オーナーの耳に「旧板垣邸がマンションに変わってしまうのではないか」という噂が入った。そこで『生まれ育った街の風景を残したい』という想いで古民家を飲食店として維持してゆく決断をし、物件の取得から店の構想まで設計、不動産、運営のチームで議論を重ねた後、7ヶ月の施工期間を経てオープンまで漕ぎ着けた。

施工は分離発注方式を取り、殆どは地元北千住の職人の協力により進められ、街並みを残していくという想いを地域として高めていった。
現オーナーはこのタイミングで飲食店として新たな事業を始めて良いのかどうか、葛藤と向き合いながら進めて来たのは言うまでもない。
しかし対話し続ける中で見えて来たのは旧板垣邸を残したいという風景への眼差しだけでなく、『人が寄り合える場所をなくしたくない』という街と人との結びつきの復興を願う強い想いだった。

和食板垣は、JR北千住駅から徒歩15分ほどの場所、旧日光街道の商店街を荒川河川敷に向かって真っ直ぐ抜ける道沿いにある。そこは旧日光街道と旧水戸街道の交差点でもあり江戸時代より人の行き交う賑やかな宿場町の入り口としての記憶を街並みとして辛うじて残しているものの、現在人はまばらで特に和食板垣付近は商店も殆どなく、近隣住民と荒川河川敷への通り道として通行人が行き交うばかりで人の溜まりが見られなかった。

その状況にこの地で長く商売を続ける者として、現在の駅前だけの賑わいをもう一度街全体に広げるため、敷居が高く感じられる和食店だけでなく、前庭には幅広い年代の方が楽しめるカジュアルなかき氷カフェ「TSUJI-お茶とかき氷-」と、裏庭にはヘッドフォンをつけて楽しむサイレントシアターを定期的に催すBAR「BA-場-」を併設した。オーナーはこの小さな店舗の集合体に「板垣・辻・場」と名前をつけた。
大きな商業建築ではなく、小さな店舗が寄り合うことで住宅と商店が入り混じり街の中に面的に活気が生まれるきっかけとなると期待している。

 クライアントの北千住の街や人々への強い思いから、このプロジェクトが始まりました。
 旧板垣邸は、宿場町として栄えた北千住に昭和13年に建築され、前面道路は地元では「板垣通り」と呼ばれたほど、板垣家が地域の活性化にも非常に尽力されていたことがうかがえる、地域に愛された住宅です。
 その場所を引き継ぎ、クライアント、建築家を始めとするチームが飲食店、人々が寄り合える場所として再生しました。

主要用途:店舗
所在:東京都足立区千住
構造規模:木造2階建
・和食板垣
敷地面積:218.75㎡
建築面積:103.85㎡
延床面積:159.35㎡
・TSUJI-お茶とかき氷-
敷地面積: 60.11㎡
建築面積:18.92㎡
延床面積:18.92㎡
・BA-場-
敷地面積:34.71㎡
建築面積:12,62㎡
延床面積:12,62㎡
設計:Buttondesign 村上譲 菊田康平
構造設計協力:丸山康太郎
照明計画:Filaments inc. 吉岡政浩
グラフィックデザイン、ペン画:マエダ特殊印刷
施工:分離発注方式
大工:荒井工務店一級建築士事務所
鳶:宮徳
板金:銅春
什器:橋本木工
木製建具:ヨシカワ工芸、和田建具店
金属建具:MFC
畳:臼倉畳店
カーペット:堀田カーペット
タイル:Wis Interior
左官:福とんぼ 福井邦彦
和紙:ハタノワタル
金属:cosmicros 森宙
家具:retrograde 三村悠、TIME & STYLE、杉山製作所、山康商店
特注照明:斉藤照明
染色:中嶋健
造園:en landscape design
石材:丸栄田中石材 給排水衛生設備:小杉設美
空調設備:SkyEngineer
電気設備:金子電業社
厨房機器:タニコー
不動産コンサルティング:創造系不動産 須永則明
写真:西川公朗

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