この土地は、もともと建て主のお父さまが所有し、シェアキッチンなど人が集まる場所として活用されていた土地です。その土地を息子である建て主が引き継ぎ、家族の住まいをつくることからプロジェクトが始まりました。
敷地には既存建物があり、さらに道路に接する間口が約2mと限られていたため、敷地を分割して新たな住宅を建てることが難しい状況でした。そのため、既存建物を生かしながら、増築という形で建築計画を進めていきます。一方、不動産の方でも、親族間での土地売買や既存建物の取り扱い、従前の権利関係など、整理すべき課題がいくつもありました。建築として成立すること、不動産として取引できること、そして金融機関から融資を受けられること。それぞれの条件を同時に満たす必要があります。
今回、特に大きな難所となったのが資金調達です。親族間での土地売買、敷地に既存建物があること、増築での住宅計画など、一般的な住宅ローンとは前提が異なります。創造系不動産では、複数の金融機関に対して計画の背景や建築内容を一つずつ説明し、融資の可能性を探っていきました。
融資の道筋が見えたあとも、建物の取り扱いや接道条件など、融資実行に向けた課題が生じました。そのたびに金融機関が求める条件を整理し、建築家や土地家屋調査士と連携。現地確認や図面の作成、必要資料の準備を進めながら、一つずつ課題を解決していきます。金融機関が求める条件を建築家やその他専門家の協力を得ながら、それぞれの知見をつなぎ合わせて、プロジェクトが実現できました。
武田清明建築設計事務所は、庭を単なる住宅の余白ではなく、家族の暮らしとまちをつなぐ場所として捉えました。1階を鉄骨造、2階を木造とする混構造によって、光や風が抜ける開放的な空間を確保。その上に家族の居住空間を浮かせることで、庭と住まいが立体的に重なる建築が生まれています。
庭には建て主とYard worksが植えた植物が育ち、家具やキッチン、食器棚なども置かれています。屋内でも屋外でもない、暮らしの延長にある庭。家族の生活の場でありながら、周囲の環境とも緩やかにつながる空間となっています。かつて人々が畑作業をし、シェアキッチンとしても利用されてきたこの土地。新たな住まいとなった今も、人が集い、周囲とつながる場所として、その土地の記憶が受け継がれています。
建築家が描く構想と、それを実現するための不動産の課題。双方の専門性を重ね合わせ、一つずつ条件を乗り越えることで、この場所ならではの住まいが実現しました。
___
- 住所: 神奈川県逗子市
- 敷地面積: 413.66㎡
- 延床面積: 272.66㎡
- 設計・監理: 武田清明建築設計事務所
- 不動産コンサルティング: 創造系不動産 井上遼介・山岸亮太