建築家・金光雄基さんが設計する、千葉県流山市の住宅プロジェクトです。

建て主と建築家と私たちが、連携して土地探しを進める中、辿り着いたのは不動産上で「ひな壇」といわれる崖上の土地でした。ひな壇状の土地は施工の難しさや費用の増大が懸念される一方、土地価格としては比較的安価に入手できる場合があります。

この土地の場合、崖上には既存の建物が残っており、崖の土留めをしている擁壁は、この土地が昭和末期に開発された際に築造されたものでした。

土地取引の条件として、買主側での解体が指定されていたため、その方法や、解体後の状況によって、土地取得における解体費や、建築時の費用が大きく変わってくることが予想されました。不動産売買契約の前段階から建主と解体業者、設計者、私たち不動産仲介が連携し、資金計画への影響を見定めます。

調査と検証の結果、古い擁壁はすべて解体し、新築時に建物と一体で再築造すること、地下部分の建築計画を踏まえて、土の搬入出をできるだけ抑えて解体をすること、重機で解体を行うため先行して擁壁を一部解体することなどを方針立てし、資金計画への影響をつかむことができました。

 

建築家が物件選びに参加し、そのコスト、リスク、そして建築的ポテンシャルについて分析することは、よりよい建築を生み出すうえで大変重要です。創造系不動産ではすべての家づくりにおいて、不動産選びから建築家とタッグを組むことをお勧めしています。

このケースでは、既存の立体的な地形を存分に生かした解放的な空間が実現しています。

HOUSE-T ―覆いのなかの積層街路―

施主夫妻を中心に三世帯とそれぞれの子どもたちが集い総勢 8 人と犬と猫が共に暮らす住まいである。

敷地は高台に位置する緑豊かなお寺と公園に挟まれた谷状の地形の谷底をはしる線路沿いの雛壇地にある。

着工前には、既存のRCの駐車場と擁壁の上部に2階建ての木造住宅が建っていたが、解体し、新たに地階に鉄筋コンクリート造の高基礎をつくりその上に3層の木造が架かる構成である。

 

建蔽率60%の100㎡程の敷地に計画される8人家族の住宅は、自然と建築面積一杯に床が積層された箱から出発することになった。箱は4層の床面をもつ直方体(短辺6m×長辺10m×高さ10m)である。

そこに地形、敷地の形状、方位や諸々の機能的要求といった具体的で現実的な事柄を重ね合わせたとき、ズレや対立が生じる。それらが要請する変化をどう見定めてゆくかが設計の主題であった。

その時/その場所の現実との応答によって、固有のざわめきを建築の内外に求めながら、同時に住まいをひとつにつなぎとめる覆いとして、直方体とその架構の元形は残響のように全体に行き渡っていてほしい。

道路に接地した車庫の幅は具体的な車両サイズで決まり、それにより圧迫された玄関の寸法を確保するためコンクリート打放しの土留め壁は外側に振られた。この斜めの壁に沿って半階分の階段がとりつき、土の高さを感じながら地中を抜けるように上階へ上がっていく。

階段を上った1階には10m×6mの南北に開かれた筒状の広間がある。床の半分は元の地形をなぞりながら裏庭をつなぎとめ、もう半分の床面は車庫の必要高さによって床面が450ミリ上がっている。ズレた2枚の床面の上部には平滑で漆喰の艶のある天井面があり、南北の連窓から拡散光が滑り込み、大きな空積全体が外の光と連動し、明るくなったり陰ったりして、8人が集う広場の空間になっている。

螺旋階段を上がった2階は天窓のある洗面コーナーを中央に据えた対称形平面をとるが、北側の吹き抜けでは、地階で斜めに振られた外壁が上階まで立ち上がって、その場所に螺旋階段が納まり、下から光がぼんやり湧きあがる光溜まりになっている。一方、南側の直階段からは上から光が滑り降り、絞られた光が路地のようにあらぬところから入ってくる。

都会的な外部をという要望から、最上階には直方体の一部を削り取りできたテラスがある。隣地の屋根の上にあり、谷の両側のお寺と公園の緑を望むことができ、街の展望台のように、この辺り一体の大きな地形を感じとることができる。

構想上の直方体と現実との重ね合わせによってうまれる変化を、設計過程のなかで都度見定め応じていった。ここでは、前面道路から、地中を抜け、広場があり、路地を抜け、空に開かれた展望台へと辿る、積層した街路のような連続が、ひとつの住まいの覆いのなかにうまれたように思う。

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  • 住所:千葉県流山市
  • 敷地面積:107.56㎡
  • 設計・監理:OFFICE YUKI KONKO 金光雄基
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 川原聡史