awn/江島史華さんによる横浜市の戸建住宅の新築プロジェクトです。

土地の面積には、いくつかの種類があります。例えば、不動産の取引では、登記簿に記載されている「公募面積」や現地を測量して得られる「実測面積」が使われます。不動産広告では、それらの面積が売買の対象面積として表示されていますが、その面積の中には、建物を建てることが難しい斜面部分や路地状部分が含まれていることがあります。
不動産の市場では一般的に、建物を建てることのできる「建築可能範囲」を考慮して価格が設定されるため、上記のような、建築が難しい部分が含まれる土地は、相場よりも価格が低くなる傾向にあります。一方、それらの部分は、物理的には建築をすることが難しいものの、建築基準法上の容積率や建蔽率の算定の基礎となる「敷地面積」には含めることができます。
このケーススタディは、不動産市場における「建築可能範囲」と建築基準法上の「敷地面積」のギャップを活用した事例です。

検討に挙がったのは、ひな壇状に造成された旧分譲地内の土地でした。敷地内外の高低差が生み出す開放的な景観がこの土地の魅力でした。敷地面積は十分な大きさでしたが、擁壁が対象地内に含まれるために、建築可能範囲が小さく、建築に十分な床面積を確保することができるかどうかが課題でした。

建築家によるヴォリューム検討の中で、建築の一部を擁壁上にせり出す案が生まれました。一般的には建築可能とされない擁壁部分にまで建築範囲を広げることで、本来は活かしきれない建蔽率や容積率を使い切ることができます。また、不動産市場における建築可能範囲は小さいため、土地価格は周辺相場よりも低く、その分を建築費用に充てることができます。十分な床面積を確保しながら、豊かな眺望を得ることができる案でした。

また、旗竿地や高低差のある土地では、建物の建ち方だけでなく、資材の搬入や重機の乗り入れができるのか等、施工性の面からも慎重な検討が必要です。土地の見学時から五十嵐惣一工務店の五十嵐新一さんと施工上の懸念点を洗い出し、計画に組み込んでいます。

プロジェクト進行中…

  • 住所:横浜市
  • 構造規模:木造 地上2階建て
  • 設計・監理:awn/江島史華
  • 施工:五十嵐惣一工務店/五十嵐新一
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産/山岸亮太