建築家の武田清明さんによる、東京の蒲田駅前商店街の集合住宅プロジェクトです。大通りとアーケード付き商店街に挟まれた敷地で、中高層の雑居ビルが立ち並ぶ地区です。オーナーは戦後からこの地で商売を営んできました。

今回、武田清明建築設計事務所と創造系不動産は、企画段階において建築の収益性を検討しました。賃料収入と借入返済と固定資産税等とのバランスから、4 階建ての集合住宅(かつ1・2 階は店舗・事務所)が最も効率的との結論を得て、金融機関との折衝を行いました。
かつての日本は、敷地に対して床面積を最大化することが経済的に唯一の正解と考えられてきましたが、低成⾧・人口減少の時代では必ずしもそうではありません。武田さんと創造系は、それを定量的に建築計画として示しました。

「リーシングの段階では、皆が言うターゲットなんて結局はやって来ない。より個別の人格(ペルソナ)を設定するマーケティング法もあるが、そんな人も来ない。そもそもこうした上から目線の現代マーケティングの発想がよくない。住宅が住宅単体で成り立たないような、なにか足りない状態で、出会う居住者が使い方や暮らし方を発見していくような補完関係があるのが望ましい」
(高橋寿太郎・新建築202302・抜粋)

都内で多く見受けられる、ワンルーム型の集合住宅は、蒲田周辺では供給過多になるであろうという、創造系による不動産市場調査と予測によって、40 ㎡と60 ㎡の少し大きめの余白ある住戸が、オーナーと建築家によって決定されました。

武田さんの建築は、アーケードの高さで固定される階高と、大通り側に設定できる階高のギャップを鉄筋コンクリートのフレームで目に見える形で表し、立体的に重層する内部空間を作り上げています。雑居ビルの谷間となる屋上にも専用テラスが計画され、都市に快適に暮らすための非日常的な仕掛けとなっています。

  • 住所:東京都大田区
  • 敷地面積:164.05 ㎡
  • 建築面積:120.46 ㎡
  • 延床面積:392.22 ㎡
  • 構造規模:鉄筋コンクリート造地上4 階建て
  • 設計・監理:武田清明建築設計事務所 武田清明・相川航
  • 構造設計:ASA 鈴木啓
  • 設備設計:EOSplus
  • 施工:岩本組
  • パース:武田清明建築設計事務所
  • 写真:川澄・小林研二写真事務所 浜田昌樹
  • 資金計画コンサルティング:創造系不動産 高橋寿太郎・倉本琢・山岸亮太・村岡知美・前田凌児