有機的に変化するオフィス

共創型戦略デザインファームBIOTOPEのオフィス移転プロジェクトです。

BIOTOPEは「らしく なる」というキャッチフレーズを掲げ、ひとりひとりが持つ妄想を起点にビジョンを引き出し育てる場を作ることによって、イノベーションの構想から実装を目指している会社です。

BIOTOPEの名前の通り「命が生まれる場」としてオフィスを捉えています。
同じ世界観を持ったパートナーでもある秋吉浩気率いる気鋭の建築家集団VUILDとともに、個性のある個人の集団を超えて、生き物としての組織化にふさわしい場をハードとして用意するというコンセプトのもと、オフィス移転プロジェクトをスタートしました。

拠点づくりの2つのハードル

オフィス移転には2つのハードルがあります。
初期費用の大きさと、物件選びの基準の分かりにくさです。
オフィス需要の高まりにより初期費用を大幅に抑えるのは難しく、物件契約後の設計施工期間の賃料も決して少ない金額ではありません。オーダーメイドな拠点づくりには、とても大きなリソースが必要だと気づきます。

一方、拠点に求めるコンセプトを実際の空間に落とし込むとどうなるか、そして物件にそれを阻害する要因がないか…そうした物件選びの基準を具体的にイメージするには、空間を取り扱う専門家の助けが必要です。

今回は初期段階からVUILDとBIOTOPEがチームを組み、2つのハードルを越えていきました。

物件が決まっていないことが面白い

チームがハードルをこえていくきっかけは、VUILD秋吉さんの、
「今回のプロジェクトは、物件が決まっていないことが面白い」という言葉でした。
並行して空間についての会話が行われることで、物件探しは拠点づくりを阻むハードルではなく、理想に近づくための大切なプロセスへと変化します。物件の判断基準が明確になっていくだけでなく、早い段階から空間についての会話が行われることで、オフィスとして使い始めるまでのリードタイムが短くなります。

そして、打合せのなかで賃料帯・広さ・エリアをある程度しぼっていくと、候補物件に共通する法則があぶりだされていきました。候補物件の絞り込みと同時に、コンセプトメイキングと空間デザインが進みます。

“有機的に変化する”プロセス

さらに、設計・施工がクライアントのフィードバックを経てくりかえされるのも、本プロジェクトの特徴です。すべてができあがった状態での移転ではなく、オフィスとして使われながら段階的に設計・施工のフェーズが進んでいます。

企業や組織をひとつの生命体としてとらえ、持続可能な“らしい”企業へと成長させるBIOTOPE。その姿勢が、VUILDのデザインを通じて拠点づくりにも貫かれていきます。

設計・施工のファーストフェーズでは、既存天井の解体・照明の設置・パーテーションのモックアップの作成などが行われました。
アンカーボルトに手をのばすかのような照明器具は、既存天井の3Dスキャンをもとに設計されました。新たに躯体に傷をつけることなく、既存天井の吊り材をそのまま使用したことによって、照明器具でありながら生き物のような存在感を持っています。

パーテーションは可動することでオフィス全体の使われ方を大きく変えると共に、プロジェクトの共有やアイデア出しのための什器でもあります。

  • 所在:東京都目黒区
  • 設計・監理:VUILD株式会社 秋吉浩気、高橋沙耶、田中翔貴、戸倉一
  • 不動産コンサルティング:創造系不動産 本山哲也