このケーススタディでの「建築と不動産のあいだ」は、クライアントが自宅と賃貸部分のヴォリュームやそれらの構成を考えながら土地を探し、購入したことです。
クライアント、Fit建築設計、創造系不動産がコラボレーションし、いくつもの土地を相互にチェックし、単にデザイン性だけでない、また逆に単に収益性だけでない、個別の空間を作り出しました。

例えば容積率の計算上、欲しい面積が取れるからと言って賃貸に適している土地というわけではありませんし、駅から近ければ高く貸せる、という時代でもありません。建築物も土地も唯一無二ですから、その土地の形状や道路の接し方によって計画できる間取りや賃貸部分の構成は異なります。

これは東京で計画された、夫婦と小さな子供のための住宅と、もう一世帯、賃貸部分を付加した「賃貸併用住宅」です。具体的な場所は決まっていませんでした。ご主人は企業にお勤めの30代で、勉強家で、不動産や投資のことをよく理解していました。

これは賃貸部分の入口です。「夫婦で話したら、うちの場合はべつに広い庭は欲しくないし、2人とも東京出身ではないから、いつかは地方に帰るかもしれない。僕も転勤はあり得る。だから家は建てたいけど、将来貸せるようにしたい、というのがそもそもの始まりでした。」

これは賃貸部分の内観です。住み易さと貸し易さのバランスが取れているか中長期的な運用効率は良いのか、さらに面白みのある組み合わせは可能かをスタディしました。

「想定以上の家を無事に形にすることができました。スケジュールもばっちりで、完成直後に賃貸部分を借りていただける若いご夫婦もみつかりました。」