ノート

お金について

家づくりをしたい人か、自社ビルを建てたい法人が、創造系不動産にご相談に来られます。その中でも、家を作りたい個人の方のお話を伺っていると、「お金」についての考え方の変化を感じます。

この「お金」についてのお話は、建築設計やデザイン業界で働く人以上に、クライアントが敏感になっているんでしょう。たくさん質問が出てきます。なぜか。それは価値観やライフプランが多様化しているからです。ではなぜ多様化しているのか。私たちは、「インターネットの興隆」と「人口減少」が原因であると考えます。私たちは、いま膨大な選択肢はあるが、どれが正解なのかが分からない時代に生きていると思います。

また多様化する理由がもうひとつあります。それは「新しい中間層」です。

例えば1970~80年代には、「一億総中流」と言われた時代がありました。日本は中間所得層が多い、という感覚です。この時代は平均的に多くの家庭が目指す幸せの一般像があったと言われています。俗に、人生スゴロクと揶揄されるようなビジョンです。しかし2014年の現在、実感として中間層といっても幅が広がり、総中流という感覚はまったくありません。

例えば総務省統計局による2007年のデータによると、30代の年収で最も多いのは、300万円代。1997年のデータでは400万円代でした。住宅の一時取得者層と言われる30代の平均年収は、確実に下がっていると言えます。

その一方で、DINKS(ディンクス)、DEWKS(デュークス)、と呼ばれる、新しい共働き世帯が主に都市部で急増しています。つまり個々人は特別に高い年収ではないですが、夫婦で協力して世帯年収を稼ぐ、という世帯です。世帯年収は少なくとも1000万円で、それ以上の夫婦が多いです。この世帯は今後も増加していくと思います。昔と異なるポイントは「女性の社会進出」です。

国際的に見て、日本は女性の社会進出を遅らせた、企業内と家庭内の事情がありました。今後の女性の評価、地位、収入は着実に上昇するでしょうし、すべきです。すると中流層のバリエーションはさらに増え、価値観や生き方の多様化は加速する。いま日本はそんなところにいるのでしょう。

DINKS層であれDEWKS層であれ、また単身であれ、新しい中流層は「お金」に対する考え方に敏感です。しかし手探り、それが実情だと思います。日本ではお金についての教育が十分ではありません。その理由はさておき、従い、私たちはそもそもお金についての教育の「目的」を十分理解しているわけではありません。

お金について学ぶ目的は、節税に長けていることでしょうか。投資に詳しいことでしょうか。貯金がうまいとか、景気が読めるとか? もちろんそれらはあれば嬉しいのでしょうが、結果そうなるだけで、目的ではありません。

お金について知る、学ぶ理由は、分からないものからやってくる「不安」から自由になることです。私たちはこの(特に将来の)「不安」にかなり突き動かされて行動していますから、本当に自分の意思ややりたいことに正直にお金を払っているか、分かりません。これがお金を学ぶ理由だと思います。つまり、主体的にお金の使い方を選択するため、ということです。

不動産を買う、家をつくる時は、まさに人生の中でも大きなお金を使う瞬間です。その時、家や不動産についてだけじゃなくて、もっと広範囲にお金について知りたい、そう思う人が増えている、そんな状況だろうと思います。このように多様化と「お金」は切り離せません。また多様化と「建築空間」も同様ですから、従い「お金」と「建築空間」は深い関係にあります。多様化した顧客の生き方、建築や空間の表現、お金や不動産。これらを統合して考えられる方法を、皆で考えられれば良いな、と思います。

PAGETOP